年頭所感 日本ゴム工業会 清水隆史会長

2024年01月01日

ゴムタイムス社

 新型コロナウイルスのパンデミックがようやく終焉を迎え、社会的に許容できる範囲になってきました。
 経済に対する影響も収まりつつあります。しかしながら、昨年の秋から冬にかけ、中国、韓国、我が国では複数の感染症、我が国では、インフルエンザ、アデノウィルス(咽頭結膜熱(プール熱))の流行が報道されており、感染症の拡大はいつ起こっても不思議ではなく、事業の展開にあたっても常に意識すべき問題となりました。
 こうした中、2023年もまた激動の年でございました。
 ロシアのウクライナ侵略が解決の出口が見えない中、新たにイスラエルとハマスの軍事衝突が起き、人道上の問題も大きく取沙汰されているところです。これ以上犠牲者が増えないことを祈るばかりです。
 世界経済は2021年には急激な回復を見せておりましたが、2022年は資源、資材や食料の高騰や不足に見舞われ、2023年はそれが解決しないまま、コロナ禍明けの需要が一巡したこともあり、中国の景気回復は不動産の問題もあって鈍化し、欧州ではドイツ、イタリアなどを中心に景気の停滞が続いています。
 また、2023年はインフレ抑制のための各国の金利政策で、株価、為替などが大きく変動し、経済に影響を及ぼした1年でもありました。
 一方で、我が国の景気は日銀短観などから見ますと、緩やかに回復とされ、企業収益は大企業を中心に改善が続いている模様です。
 こうした状況下、ゴム産業の最大の需要先である自動車については、2度にわたる大手自動車関連工場の稼働停止に見舞われたものの、基本的には半導体などの供給不足が緩和され、輸出も増加し回復傾向が顕著となりました。
 ゴム製品製造業の生産については、自動車関連部品が主力を占める工業用品、ゴムホースなどは比較的順調に推移していますが、履物やゴムベルトなどは前年を下回っていますし、自動車タイヤについては、新車用は増加しているものの、市販用については厳しい状況であります。いずれにせよ、ゴム製品製造業全体を通じて、いまだコロナ禍直前の2019年には届いていません。
 幸いにして、出荷金額は引き続き前年を上回り、収益は改善しているとの記事を見ることもございますが、原材料価格やユーティリティーコストの高止まり、人件費や物流費の高騰などに対応しきれてないことも多々あると伺っています。
 さて、本年2024年の経済はどうなるでしょうか。IMFの「世界経済の見通し」によると、世界経済の成長率は昨年より若干鈍化する見通しですし、日本経済については緩やかな回復は続くものの、やはり回復ペースは鈍化するとの見方が多くなっています。
 ゴム製品製造業については、自動車生産にまだ伸び代があると見られ、好影響を期待しておりますが、海外の景気の停滞や上述した様々な価格の高騰や高止まりも当面解消されることは難しいと考えられます。
 また、物流の2024年問題、恒常的な人手不足など、下振れ要因は尽きません。
 こうしてみると、2024年も引き続き先行き不透明であるとの認識を持たざるを得ません。
 加えて、現代はこれまで潜在していた問題が突如噴出し、それが世界に大きな影響や分断をもたらす、想定していなかった変化が常に起こり得る時代です。そういう意味では2024年に限らず、この先も不透明で不安定な時代が続くのではないでしょうか。
 しかし、まさにこういう時代だからこそ、我々は大きな方向性を見失うことなく、あらゆる事態に備え、真摯にものづくりを行い、より良い製品をお客様に届けることが必要だと感じています。
 本年は辰年です。活力旺盛になって大きく成長し、形が整う年と聞いております。これまでの努力が形を成し大きく成長し、先が見通せる状況になることを期待したいと思います。

清水隆史社長

 

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