三洋化成工業は12月18日、ポリオレフィン不織布などに持続的な親水性を付与する不織布用耐久性親水剤「ハイドロスルーPS887」を開発したと発表した。「ハイドロスルーPS887」で処理した不織布は、繰り返し透水しても高い親水性を維持しているため、紙おむつや生理用品などの衛生材料に用いた場合、頻繁な取り換えをしなくても快適に使用でき、使い勝手や満足度を向上させるだけでなく、経済的で廃棄物量を減らし、環境負荷低減にもつながる。
また、「ハイドロスルーPS887」は植物由来原料を使用しており、宗教上の理由で動物由来原料を好まないユーザーにも使用いただける。
不織布は軽量で加工がしやすく、さまざまな機能を付与しやすいことから各種用途に幅広く使用されている。中でもポリオレフィン不織布は、通気性、柔軟性、速乾性に優れており、肌触りが快適であるため、紙おむつや生理用品などの衛生用品に用いられている。これら衛生用品は、水を通すポリオレフィン不織布(トップシート)と水を通さないバックシートの間に、パルプ、高吸水性樹脂などの吸収体を配置した構成になっており、尿や経血はトップシートを通って吸収体に吸収される。この時、尿や経血が吸収されるまでの時間が短いと濡れ広がりが抑えられ、不快感を回避できる。ポリオレフィン不織布は疎水性であり、そのままでは水をはじき透水しづらいため、通常、親水化剤による親水化処理をして透水性を向上させている。
頻繁な紙おむつ交換には時間と労力が取られることや、職場、学校、旅行などでは希望するタイミングで生理用品を交換できないケースも多いことなどから、長時間使用でき、交換頻度を減らせる衛生用品に対する要望が強まっている。しかし、従来の親水化剤は、わずか1、2回の吸収によって透水性が低下してしまい、それ以上使用すると液残りや濡れ広がりが発生してしまうため、頻繁に取り換える必要があった。
同社は、得意とする界面制御技術を活かして、ポリオレフィン不織布への透水性を高める親水基と、耐久性を高める疎水基の最適なバランスを見出し、ポリオレフィン不織布に塗布または含浸するだけで、持続的な親水性を付与できる耐久性親水化剤「ハイドロスルーPS887」を開発した。
「ハイドロスルーPS887」は繊維への浸透性に優れており、少量でも均一に付着でき、ポリオレフィン不織布の特長である柔軟性を損なわない。
従来の親水化剤と比較して、透水を3回繰り返した後でもポリオレフィン不織布は高い親水性を維持しているため、衛生用品のトップシートに使用した場合、交換頻度を減らしても装着感を損なうことなく快適に使用いただける。これにより、育児や介護を行う人の負担軽減が期待できるだけでなく、使用する衛生用品の数を減らせることで、経済的負担軽減や廃棄物量の低減にも貢献する。
前述の特長から、「ハイドロスルーPS887」は衛生用品用の不織布の親水化処理だけでなく、農業用シート、農業用不織布ポット、土木用ネットなどへの用途展開が期待できる。また、ポリオレフィンだけでなく、ポリエステル繊維など他の疎水性不織布にも適用できるほか、親水性の付与に伴い不織布の吸水性が向上したり、表面に水分子が吸着することにより静電気防止性が向上することも期待できる。これらの新たな機能を視野に入れながら、今後は、さまざまな用途開拓を進め、人々の快適な生活や環境負荷の低減に貢献していく。
2023年12月19日