BASFは12月21日、ネットゼロへさらに前進するために、スコープ3・1の排出量目標を発表した。
この発表は、ドイツのルートヴィッヒスハーフェンで開催された投資家およびアナリストへ向けた報告会にて行われ、同社取締役会会長 Dr・マーティン・ブルーダーミュラーと、最高財務責任者(CFO)である Dr・ディルク・エルバーマンが、2018年に発表した企業戦略の実施状況について報告した。
ブルーダーミュラーとエルバーマンは、この企業戦略で定めたキャッシュの活用における優先順位付けを同社がどのように実現しているかを説明し、さらに収益性を高めるための事業経営に向けて、差別化された新たな方針も提示した。
同社の企業戦略は、有機的成長を軸にしている。2018年~2022年まで、同社は支出の約60%を設備投資と研究開発に割り当てた。
2018年以降の配当総額は158億ユーロに達し、平均配当利回りは年間5・6%となる。この10年におよぶ同社の魅力的な配当金は、同社の強力なキャッシュ創出に支えられてきた。2013年~2022年までの営業活動による平均キャッシュフローは年間77億ユーロ、平均フリーキャッシュフローは年間34億ユーロに達している。
継続的なポートフォリオ管理を通じて、同社はそのポートフォリオを革新的な成長事業に集中させてきた。過去5年間で、同社は売上高50億ユーロの事業を売却し、売上高40億ユーロの事業を買収した。
2018年に発表した戦略において、顧客のニーズをより実現するため、同社が顧客重視の組織へと変革することは重要な要素となっている。それ以来、同社は各事業の経営能力を高めるために、様々な施策を講じてきた。
この差別化経営によって、各事業はそれぞれのビジネスモデルとプロセスをさらに最適化することになる。これは、適応したプロセス構造、ITシステム、ガバナンスの枠組みによってサポートする。フェアブントへの統合がそれほど深くない事業は、統合企業の利点を維持しながら特定の顧客産業のニーズを満たすための柔軟性を確保できる。
この方針を適用するのは、サーフェステクノロジー事業セグメントの電池材料およびコーティングス事業、またアグロソリューション事業セグメントとなる。
同社は今後もバリューチェーンに沿ってフェアブント事業(ケミカル、マテリアル、インダストリアル・ソリューション、ニュートリション&ケアから構成)を管理し、効率的な資源の活用、需要の集約や、同期および統合した生産を通じて価値を生み出していく。
将来的には、製品のカーボンフットプリント、バイオマスやリサイクル材の使用といったサステナビリティに関する要素を製品に付加するため、バリューチェーン管理はより重要となる。
同社は 2024年1月より、グループの経営に用いる主要業績評価指標(KPI)を変更する。短期・中期的には、減価償却費および特別項目控除前営業利益(特別項目控除前 EBITDA)やキャッシュフローをより重視する。
また、中期的な経営KPIとして、引き続きROCEを使用し、資産の収益性を重視する。
この差別化経営により、同社は事業部門にも新しいKPIを導入する。単一産業に特化した事業は、産業固有のKPIで更に綿密に管理する。一方でフェアブントに深く統合した事業に関しては、バリューチェーンに沿って管理する。
同社は、全ての事業におけるキャッシュの創出に重点をおく。さらに、フェアブント事業では、サイクル全体で17%、電池材料事業では、2030年までに 30%以上(金属を除く)、コーティングス事業では、中期的に15%以上、アグロソリューション事業では、中期的に23%以上以下の減価を目標とする。
これらの経営方針の変更に伴い、同社は外部報告書や将来予測も変更する予定となる。
2024年2月23日に公開予定のBASFレポート2023では、同社は売上高、特別項目控除前営業利益、投下資本利益率(ROCE)の見通しを示すのではなく、グループレベルでの減価償却費および特別項目控除前営業利益(特別項目控除前 EBITDA)とフリーキャッシュフローを予測する。
また、セグメントレベルでは、減価償却費および特別項目控除前営業利益およびキャッシュフローの見通しも提供する予定となる。
同社は、2018年の戦略におけるクライメート・ニュートラル(気候中立)な成長を確保するという当初の目標を元に、クライメート・ニュートラルに向けた取り組みの進捗状況を、投資家代表などに提示した。
2021年3月、私たちはこの目標をさらに高め、スコープ1、2の排出量について「2030年までに2018年比で25%の削減、2050年までに実質ゼロ」という削減目標を設定した。これらの目標を達成するために、同社は再生可能エネルギーと炭素削減技術の活用に焦点を当てている。
購入した原材料に関連する排出量は、信頼できる一次データの取得が進んだことから、同社はスコープ3・1排出量の削減目標を設定するために、強固な基盤が十分に整っていると確信している。2030年までに、同社はポートフォリオ全体のスコープ3・1排出量を2022年比で15%削減することを目指す。即ち、購入した原材料1kgあたりのCO2排出量を1・57kg から1・34kgに削減する。