昨年の日本経済全体は、行動制限緩和により経済回復が進むと期待されていました。日本の基幹産業である自動車産業は、部品供給制約が解除され生産台数が大幅に増加しました。しかし現状では、物価高による消費低迷やウクライナ問題、イスラエル・ハマス紛争の勃発、中国の国内事情からの景気低迷など海外経済の下押し圧力が強くあり回復には勢いが欠けております。今年の日本経済は景気回復が継続していくと思われます。その理由は、堅調な企業収益を背景にサプライチェーン強化・デジタル化・人手不足対応の設備投資、インバウンド需要の回復により、内需中心で回復が進むと考えています。輸出は、海外景気が徐々に復調し、円安効果もあり自動車以外の産業も次第に回復していくものと思われます。
コンベヤベルトの令和5年度の生産量は9070トン(前年比95%)の見込みです。その内訳は、内需が5622トン(同89%)、輸出が3448トン(同107%)です。内需は、自動車産業の増産の影響を受けて主力需要先の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量が回復してきましたが、前年比100%を確保できませんでした。輸出は円安効果と鉱山需要が好調で前年比107%でした。
令和6年度の需要予測は8309トン(前年見込比92%)としました。その内訳は、内需が6570トン(同117%)、輸出は1738トン(同50%)の見込みです。 内需は鉄鋼産業他主力需要先が回復し前年比100%を確保する見込みです。輸出は海外景気の低迷を受けて鉱山需要が落ち込む見通しです。
伝動ベルトの令和5年度の生産量は1万197トン(前年比90%)の見込みです。その内訳は、内需が8500トン(同96%)、輸出が1698トン(同70%)です。 内需は主力需要先である自動車産業は回復してきましたが、工作機械産業の減産の影響を1年を通じて受けました。輸出は海外経済の低迷より70%と非常に厳しい結果となりました。
令和6年度の需要予測は1万596トン(前年見込比104%)としました。その内訳は、内需が8832トン(同104%)、輸出が1763トン(同104%)です。内需は主力需要先である自動車産業に加え、工作機械産業も回復し前年比100%を確保する見込みです。内需輸出合計ではコロナ前令和元年比97%の見込みです。
樹脂ベルトの令和5年度生産量は約100万㎡(前年比86%)の見込みです。その内訳は、内需が約94万㎡(同87%)、輸出が約6万㎡(同77%)です。行動制限が緩和されましたが、2大需要先である食品分野、物流分野の需要は期待したほど発生しませんでした。食品分野はインバウンドの増加、外食向けの回復がありましたが全般的に伸び悩みました。物流分野は大型物流倉庫新設等が以前の活況な時期と比べると落ち着き、取替需要も大きく発生しませんでした。
令和6年度の需要予測は、約108万㎡(前年見込比108%)と100万㎡の大台は確保できる見通しです。コロナ前令和元年比では89%と本格的回復はまだ先の見通しです。その内訳は内需が約102万㎡(同109%)、輸出が約6万㎡(同103%)です。インバウンド需要、外食産業の回復による食品分野の伸長と物流センター増設による物流分野の伸長を取り込んでいきます。
今後、欧米はインフレの鎮静化に伴って順次利下げに転じていき欧米経済は徐々に回復していくものとみています。中国は不動産市況の低迷や少子化問題、若年層失業率といった構造的な問題を抱え、以前のような成長は期待できません。ASEAN主要5カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)やインドなどアジア新興国の景気は堅調な内需に支えられ着実な成長が見込めます。
このような状況下、当日本ベルト工業会は、経済政策や需要先動向等を的確に把握しタイムリーなデータサービスを行う一方、ISO TC41のメンバーとして日本の考え方をISOに反映させ日本規格の国際化を推進するなど、尚一層のベルト業界発展のため貢献してまいります。
2024年01月02日