産業技術総合研究所(産総研)は1月25日、東京大学、海洋研究開発機構、群馬大学、製品評価技術基盤機構、日本バイオプラスチック協会と、様々な生分解性プラスチック(ポリ乳酸を除く)が、神奈川県の三崎沖(水深757m)、静岡県の初島沖(水深855m)、伊豆小笠原島弧海底火山付近の明神海丘(水深1,292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5,503m)、日本最東端の南鳥島沖(水深5,552m)の全ての深海で、微生物により分解されることを世界で初めて明らかにしたと発表した。
生分解性プラスチック表面には無数の微生物がびっしりと付着し、時間と共にサンプル表面に粗い凸凹ができて、生分解が進行する様子が観察された。深海における生分解速度は、水深が深くなるにつれて遅くなるものの、全ての深海底で生分解されることも確認された。水深約1,000mの深海底では、同研究で用いた生分解性プラスチックで作製したレジ袋は、3週間から2ヶ月間で生分解されることも計算により推定された。
今回、菌叢解析(16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシング)およびメタゲノム解析により、深海から生分解性プラスチックを分解できる新たな分解微生物を多数発見することにも成功した。さらに、発見した分解微生物は、世界中のさまざまな海底堆積物にも生息していることが明らかになり、分解が実証された生分解性プラスチックは、世界中のいずれの深海でも分解されると考えられる。
同研究成果により、将来の海洋プラスチック汚染の抑制に貢献する優れた素材として、生分解性プラスチックの研究開発の進展が期待される。
同研究により、海洋プラスチックごみが最終的に行き着くと考えられている深海底でも、生分解性プラスチックは微生物により分解されることが証明された。プラスチック製品は可能な限り回収して、リサイクルすることが必要であるが、全てのプラスチックを回収することは不可能であり、環境中に流出するものも多々ある。従って、海洋流出の避けられない製品などには、生分解性プラスチックを適切に使用することが必要不可欠であり、生分解性プラスチックは、将来の海洋プラスチック汚染の抑制に貢献する優れた素材であると言える。今後は、使用中は優れた物性を持続的に発揮、使用後に、仮に海洋に流出したら分解が始まるとともに、可能な限り速やかに分解する海洋分解開始機能を有する高性能な海洋生分解性プラスチックの開発が期待される。
2024年01月26日