東洋紡、NEDO事業として採択 次世代型界面活性剤生産向上へ

2024年02月07日

ゴムタイムス社

 東洋紡は2月6日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募する「バイオものづくり革命推進事業」の実施予定先として採択されたことを発表した。これを受けて同社は、NEDOの支援のもと、微生物を使って生産する天然由来の界面活性剤「マンノシルエリスリトールリピッド」の利用分野拡大に向けた革命的生産システムの開発について、取り組みを開始した。
 「バイオものづくり」は、遺伝子技術を活用して微生物や動植物などの細胞から有用な目的物質を生産する新しいテクノロジー。これまでの化石資源を原料とした化学的な製造プロセスと異なり、多段階の化学反応を必要としないことや、自然条件下で製造可能などの特長から、温室効果ガスの排出削減や化石資源原料の使用削減などに寄与し、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」の実現に貢献する「サステナブル(=持続可能)なものづくり」として近年ますます期待が高まっている。「バイオものづくり」で生産される有用物質には、生分解性プラスチック、バイオ燃料、細胞性食肉、バイオ界面活性剤などがあり、化学素材、燃料、医薬品、動物繊維や食品など、幅広い産業分野での活用が見込まれている。
 同社は今回の採択を受け、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と共同で、微生物(酵母)が生産する天然由来の界面活性剤、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)の利用分野拡大に向けた革命的生産システムの研究・開発を進めていく。
 界面活性剤とは、界面(物質の境の面)に作用して性質を変化させる物質の総称で、親水性と親油性の両方の性質を有し、水と油を混ぜ合わせるのに役に立つことなどから、石鹸や洗剤、シャンプー、食品添加物、医薬品などの成分として幅広く使用されている。従来の界面活性剤の多くが石油由来の原料から作られるのに対し、MELは自然界に存在する微生物(酵母)を用いて植物油脂などを発酵させることにより生産する天然由来のサステナブルな界面活性剤。低炭素社会への意識が高まる中、石油由来原料による合成界面活性剤を代替するものとして注目が高まる一方で、生産コストの面から一部の化粧品原料などに使用分野が限られるなど普及に課題があった。
 同社は、2004年、新規バイオ素材の開発検討過程においてMELの可能性に着目し、産総研と共同研究を開始。同社がバイオ事業で長年培った微生物の発酵・培養技術と、産総研の持つ界面物性の評価・構造解析の知見を融合することにより、2009年には、業界に先駆けてMELを活用した保湿剤向け化粧品原料「セラメーラ」の製品化を実現している。
 同社は今後、産総研と共同でMELの生産性を向上するための高生産菌の開発や、連続培養生産およびスケールアップ技術、分離・精製・加工技術などの開発に取り組んでいく。また、植物油脂に替えて廃食油をMELの原料とする技術開発も進めるなど、未利用資源を有効活用することで環境負荷の低減を図りながら、大幅なコストダウンを可能にする「革命的生産システムの開発」を実現し、利用分野の拡大を目指す。2025年頃までに化学農薬の使用量を低減する農業用展着剤、牛のゲップに含まれるメタンの排出量を低減する飼料配合剤や、衛生材のコーティング剤など、付加価値の高い新規用途での展開を計画している。
 同社は、長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」に掲げる通り、次世代型界面活性剤MELの利用分野の大幅な拡大を可能にする経済的な生産技術や生産システム、さらにはMEL応用製品の開発・販売を通じて「バイオものづくり」を強力に推進することで、「脱炭素社会&循環型社会」の実現に貢献できるよう努めていく。

マンノシルエリスリトールリピッド

マンノシルエリスリトールリピッド

関連キーワード: ·

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー