住友ゴム工業は2月7日、タイヤ開発プロセスにおけるシミュレーション技術「タイヤ空力シミュレーション」を開発したと発表した。
EVの燃費(電費)性能向上のためにはタイヤの転がり抵抗の低減に加えて、タイヤ周りの空気抵抗低減が非常に重要になる。同社では走行する車両のタイヤ付近の気流をAIも活用した独自のシミュレーションにより可視化することで、空力性能を最適化するタイヤ形状の開発を進め、2027年発表予定の次世代EVタイヤではEVの電費性能向上にさらに貢献するタイヤの開発を目指す。
EVタイヤに求められる性能として、航続距離を最大化するための低電費性能の向上が重要な要素の1つとなる。同社ではこれまでも様々なアプローチでタイヤの転がり抵抗低減に取り組んできたが、これに加えて、このたび開発した「タイヤ空力シミュレーション」を活用して、EVタイヤの電費性能向上において重要となる空気抵抗低減にも取り組む。
EVへの変化が急速に進む現在、ICE(内燃機関)車両で過半を占める熱によるエネルギーロスがEVではほとんどなくなり、空気抵抗の影響が相対的に増加する。タイヤは車体から露出しており、タイヤ付近を経由した空気は車両下部や側面にも大きくはみ出して流れるため、乗用車の空気抵抗によるエネルギーロスのうち20~25%はタイヤが関係する。熱によるエネルギーロスがほとんどないEVでは、転がり抵抗と合わせるとエネルギーロスの約34~37%がタイヤによるものとなる。
今回新たに開発した「タイヤ空力シミュレーション」は、タイヤ付近の空気抵抗を可視化するシミュレーション技術となる。実車両データを用いることや、タイヤのパターンを再現した上で、車重による接地部分のタイヤ形状変化も含めて結果の分析にAI技術を活用しながらタイヤの回転による空力を計算できることが特徴となる。
さらにこれに加えて今回、タイヤのサイドウォールの文字や微細な凹凸がパターン同様に回転しながら変形するシミュレーション技術を開発した。EVタイヤにおいてはサイドウォール部の凹凸を少なくし、空気抵抗を低減する事が重要ですが、今回開発したシミュレーション技術を活用する事でデザインと空力性能をより高次元で両立させたタイヤ開発が可能となる。
シミュレーションの精度を確認するために実施した実車による風洞実験結果と比較して、タイヤ後方の気流の傾向やサイドウォール部の凹凸を少なくしたEVタイヤの方が標準タイヤよりも空気抵抗値が低くなり、その変化量も一致したことから有用性を確認できた。また、AIも空気抵抗が大きい時はサイドウォール部がタイヤの空気抵抗に重要な位置であると示唆しており、同AI技術の有効性も確認が出来た。同技術を活用することで、空力特性の最適化によるタイヤ性能向上を図り、転がり抵抗低減と合わせてEVの電費性能向上に貢献する。
同社は2023年3月に、タイヤ事業における独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表した。「トワノワ」はバリューチェーン上の5つのプロセスからなる「サステナブルリング」と各プロセスから収集したビッグデータを連携させる「データリング」で構成しており、二つのリング間でデータを共有・活用することで新たな価値提供を目指す。
今回開発したタイヤ空力シミュレーション技術では、「企画・設計」プロセスを通じて得られたシミュレーションデータを走行時の空気抵抗を減らすことに役立て、EVの電費性能向上につなげる。
「トワノワ」を通じ、同社はESG経営の推進を更に加速させ、2050年のカーボンニュートラルの実現と持続可能な社会の発展に貢献していく。
2024年02月08日