インフラ施設では、多くのゴム・樹脂製品が使われ、我が国の産業の基盤づくりや公共交通機関の発展に貢献してきた。インフラ施設で使われる主なゴム・樹脂製品は、コンベヤベルトや搬送用ホース、防振ゴム、防舷材、ゴム支承、止水材、可とう継手、養生マット、排水管など多種多様に及んでいる。
本紙では、インフラ施設で使われるゴム・樹脂製品を取り扱うゴム商社
23年(23年度)の売上実績(対前年比)の設問では、「やや上昇」「やや下降」と回答した企業が半数ずつとなった。一方、24年(24年度)の売上予想の設問では「やや上昇」「横ばい」と回答した企業が半数ずつの結果となった。また、23年(23年度)のインフラ商材に関する仕入価格予想(対前年比)の問いでは、全ての商社が「やや上昇」と回答した。23年度に続いて、24年度も原材料価格の高騰がインフラ商材の仕入価格に影響を及ぼすものと考えられる。
また、現在注力しているインフラ分野については「道路」「鉄道」「港湾・ダム」と回答した企業が多くなっている。
現在、今回アンケートに回答していただいた企業の注力商材を取り上げると、カテックスはトンネルの補助工法「AGF―Tk工法」と「多重式長尺フォアパイリング」を挙げた。AGF―Tk工法は、山岳トンネルで適用される補助工法で、管の設置時に専用治具を使用し、端末管を中間管から引抜く工法である。端末管を事前に撤去し、掘削時に周辺地山へ切断撤去に伴う衝撃を与えることがない。これにより地山への緩みや抜け落ちを抑制する。
多重式長尺フォアパイリングについては、従来工法は長尺鋼管を支保工の外側に打設するため、掘削の進行に伴って掘削断面との離れが大きくなり、地山条件によっては、鋼管下部からの地山の剥落が懸念されていた。一方、多重式工法は奇数・偶数の鋼管施工断面をずらすことで、鋼管あるいは改良体がダブル配置となり、鋼管間から地山の抜けが低減し、天端の安定性や経済性が向上した。
ハシモトが注力するインフラ商材は「防舷材」を挙げる。同社はベルト関連やホース関連、ゴム、樹脂、金属関連、特殊品、環境関連、そして工事組立などを行う工事モジュール関連などに分かれている。昨年6月にはホームページをスマホやタブレット端末に対応したリスポンシブサイトにリニューアルした。同サイトでも「おすすめ商品」のコーナーで防舷材などの製品をPRしている。
■社会資本の老朽化と現状
ゴム・樹脂業界がインフラ分野に注目する理由としては、高度経済成長期(1950年代後半から1970年代前半)に建てられたインフラ施設の老朽化が進み、老朽化施設への対策が急務となっていることがある。
国土交通省の資料によれば、建設後50年以上経過する道路橋(約73万橋、橋長2m以上の橋)の割合は、2020年3月時点で約30%だったのが、2030年3月時点には約55%へ上昇し、トンネルも2020年3月時点の約22%から2030年3月時点で約36%になる見通しだ。ただ、インフラ施設の老朽化は、建設年度で一律に決まるものではない。立地環境や維持管理などによって状況は大きく異なるだけに、老朽化するインフラ施設をいかに戦略的に維持管理・更新していくかが課題。ゴム業界もそれらインフラ施設のニーズに応えた製品や技術を開発し、国土強靭化に貢献していくことが求められている。
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