王子HDと山形大が共同開発 CNF主成分の高分子電解質膜

2024年03月21日

ゴムタイムス社

 王子ホールディングスと国立大学法人山形大学はこのほど、セルロースナノファイバー(CNF)を主成分とする、燃料電池用「高分子電解質膜(PEM)」の開発に成功したと発表した。
 同社は、持続可能な社会へ貢献すべく、森林を健全に育て、その森林資源を活かした再生可能な木質由来の新素材開発を中心に、グリーンイノベーションを推進中だ。その柱の1つとして、CNFの研究開発に取り組み、同社独自の高品質(高透明・高粘度・チキソトロピー)なCNFの製造を可能にした。
 今回、山形大学(増原陽人教授)において、CNFとプロトン伝導性を有する微粒子を複合化したPEMを製作し、高いプロトン伝導性と膜強度を併せ持つ特異な性能を確認した(共同で関連特許出願済み)。
 既存の燃料電池等に用いられるPEMについては、フッ素を含む材料で、また石油由来の樹脂製であることから、安全面や環境面の課題が指摘されている。これに対し、今回、開発に成功したPEMは、燃料電池に求められる高いプロトン伝導性((水素イオン)が通る性質。高いほど電池性能が向上する)を有しながら、木質由来のCNFを主成分とし、PFASフリーも実現した。
 脱炭素社会への転換がグローバルに進行し、世界各国の自動車に対する環境規制が強化され、電動車が急速に普及している中で、水素を燃料とし、走行時には水蒸気しか発生させない燃料電池自動車への期待は高くなってきている。今後、燃料電池に対する需要は、益々高まることが予想されており、当社は開発したPEMの実用化に向けた研究開発を進めていく。

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