産業技術総合研究所(産総研)は3月26日、神⼾⼤学、カネカと共同で、ポリ乳酸が抱えるもろさと⽣分解性の課題を、微⽣物により⽣合成される乳酸と3―ヒドロキシブタン酸の共重合体(LAHB)をブレンドすることで克服したことを発表した。
ポリ乳酸は、代表的なバイオ資源由来プラスチックだが、⼒学的にもろい、⽣分解性が限定的などの課題がある。今回、LAHBをポリ乳酸にブレンドすることで、ポリ乳酸の伸びの⼤幅な改善に成功した。また、LAHBのブレンドによりポリ乳酸の海⽔中での⽣分解が促進されることを⾒いだした。なお、同技術の詳細は、24年3⽉19⽇に「International Journal of Biological Macromolecules」にオンライン掲載された。
⽣分解性を有するプラスチックは、時間とともに⽔と⼆酸化炭素にまで分解されるため、その利⽤の拡⼤は環境汚染の抑制につながる。化⽯資源の消費を減らすという観点では、⼤気中の⼆酸化炭素を固定化したバイオ由来資源を原料とするプラスチックへの代替が有効だ。ポリ乳酸は、バイオ由来資源の乳酸発酵により得られる乳酸をモノマーとして化学重合により合成されるバイオプラスチック材料。ポリ乳酸はポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート(PET)と同程度の物性を⽰し、透明性、⽣体適合性などの特徴を有することから、⽯油由来プラスチックの代替材料として利⽤拡⼤が期待されている。
産総研は、ポリマー材料をマトリックスとした複合材料開発、複合化プロセス技術開発および複合材料の構造評価に取り組んでいる。神⼾⼤学の⽥⼝特命教授らの研究グループは、遺伝⼦組換え⼤腸菌により、乳酸(LA)と3―ヒドロキシブタン酸(HB)の共重合体(LAHB)の⽣合成に世界で初めて成功している。カネカは、⽔素細菌を利⽤したバイオプラスチックの量産技術を世界で初めて確⽴した。
同研究開発は、国⽴研究開発法⼈新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業「クリーンエネルギー分野における⾰新的技術の国際共同研究開発事業/⾰新的バイオプロセス技術開発/糖原料からの次世代ポリ乳酸の微⽣物⽣産技術開発」(2020〜2023年度)による⽀援を受けた。
産総研と神⼾⼤学は、国⽴研究開発法⼈科学技術振興機構の委託事業「研究成果展開事業/研究成果最適展開⽀援プログラム(A―STEP)産学共同(育成型)/微⽣物産⽣コポリマーLAHBのポリ乳酸多機能改質材料化」(2023〜2025年度)にて、本研究を継続し、LAHBの⼀次構造(モノマーの⽐率や配列、分⼦量など)およびポリ乳酸とのブレンドの相構造と、ブレンドの⼒学・熱特性、⽣分解特性との相関関係を調べ、ポリ乳酸の課題を克服するのに最適なLAHBの構造を明らかにすることに取り組む。これにより、ポリ乳酸/LAHBポリマーブレンドを、⽣分解性と優れた⼒学特性を兼ね備えたバイオ資源由来プラスチック材料として活⽤する基盤構築を図る。
2024年03月27日