三菱ケミ設計の樹脂部材 月面探査車YAOKIに採用

2024年04月15日

ゴムタイムス社

 三菱ケミカルグループは4月12日、コンプライアントメカニズムを適用して設計を行った樹脂部材が月面探査車YAOKIに採用されることになったと発表した。
 YAOKIは、ロボット・宇宙開発ベンチャーのダイモンが開発中の月面探査車で、2024年中に民間企業としては世界初となる月面探査の実現を目指している。
 コンプライアントメカニズムとは、弾性を持つ素材で製品を一体的に成形することで、力や運動をしなやかに伝達し、機能を発現させる設計概念。剛体パーツにネジやバネなどの可動パーツを組み合わせて動きを実現する従来の組み立て成形品と比較し、動作正確性の向上、パーツ数削減、メンテナンスフリー化、静音化、モノマテリアル化によるリサイクル性の向上 などの特長をもった部材設計が可能となる。同社グループでは、総合化学メーカーとしての強みである素材知見に、構造設計・最適化シミュレーション技術を融合した新たなアプローチとして、コンプライアントメカニズムを活用した製品開発を推進している。
 同社グループとダイモンは、YAOKIの開発にあたって炭素繊維強化プラスチック部材の提供や技術支援を行う内容のパートナーシップ契約を締結している。今回設計を行った部材は、走行時に車体を安定させる役目があり、落下時などの耐衝撃性が必要とされながら、輸送コストの点で重量増加につながる高剛性設計ができないという課題があった。そこで、コンプライアントメカニズムの概念を取り入れた設計を行い、素材から構造を見直すことで、重量増加を抑えつつも従来品と比較して耐衝撃性が著しく向上したモデルの設計 に成功した。さらに、同社グループで保有するFIM(Freedom Injection Molding)技術により、スーパーエンジニアリングプラスチックを用いた射出一体成形を実現した。
 今後も宇宙用途のみならず、幅広い分野への価値提供を目指し、同社グループの強みである素材知見と成形技術の組み合わせによるコンプライアントメカニズムの製品開発を進めていく。

設計部材イメージ

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