ソディックは4月10日、スマートフォンやタブレット端末、精密自動車部品などに代表する精密金型、精密部品加工において好評を得ているリニアモータ駆動形彫り放電加工機「AL」シリーズをモデルチェンジした“環境配慮型”工作機械「ALプラス」シリーズ「AL40G+」「AL60G+」に続き、新たに「AL80G+」「AL100G+」を順次販売開始すると発表した。
モデルチェンジのポイントは、省エネ性能(消費電力量の低減)、自動化が容易(簡易的な省人化から本格的な自動化までシステムアップが容易)、精度向上(同シリーズすべてに精密熱変位補正機能を標準装備)となる。
「ALプラス」シリーズは、“環境配慮型”工作機械として具現化すべく、部品の調達から製造工程、製品の性能を決定づける企画、設計に至るまで徹底した検討を行った。
長年培った同社リニアモータ制御技術と最先端放電制御技術およびAI(人口知能)機能を融合、これにより省エネルギ性能が飛躍的に向上し、従来機比で消費電力量47%低減を達成した。
なお、同シリーズの生産は、太陽光発電システム導入によりエネルギ消費削減を実践している同社事業所の工場で行っており、性能に加え製造面でも環境対応に貢献する製品となっている。
「ALプラス」シリーズの主な特長は7つ。
1つ目は、機械精度を10年保証する「X・Y・Z、3軸リニアモータ駆動方式」という点。同社自社開発・製造の高出力リニアモータを搭載し高速かつ高応答な加工性能を発揮、ボールねじを使用しない非接触駆動により経年変化を抑え長期にわたり高精度を維持する。また、高加速リニアモータ駆動によるZ軸ジャンプ制御を最適化し加工時間を短縮した。
2つ目は、精密熱変位補正機能(TH COM、サーマルコミット)を標準搭載しているという点。これまでAL40G/AL60Gで好評を得ている精密熱変位補正機能TH COMを大型放電加工機「AL80G+」「AL100G+」に標準搭載した。TH COMは、設置環境の温度変化、並びにZ軸の高速ジャンプ時の熱影響、双方に対する変位を抑制する。また、機械要所の温度をグラフで見える化した機能をNC装置のガジェットに搭載、長時間に及ぶ加工においてもより安定した精度が得られる。
3つ目は、モノづくりの見える化と作業効率アップ、デジタル化に対応しているという点。稼働監視アプリ「LQ Message」を標準添付し、ネットワークに接続した同社機の稼働状況をパソコン上で監視できる。また、メール、LINEやSlackでアラートを通知するお知らせ機能により、ダウンタイムの削減・機械稼働率の向上に役立つ。さらに、「ALプラス」シリーズは、世界標準の通信規格OPC UA標準搭載、同社製の工作機械と他社製品を含めたIoTシステムとのネットワーク接続が可能となり、データの蓄積や分析など工場のデジタル化に対応する。
4つ目は、加工液処理最適制御による省エネルギ性能が向上しているという点。形彫り放電加工においては加工そのものに要する電力よりも、加工液循環などの加工液処理系に用いられる電力の方が大きく、約57%を占めている。同社は消費電力量削減のためにはこれらを低減することが重要と考え、「ALプラス」シリーズでは、加工液の送液ポンプをインバータ化し、噴流有無に応じて最適にコントロールするエコ運転により、消費電力量を従来比約47%削減した。(銅電極φ10mmを用いSKD61のワークを加工深さ1mm加工(60Hz地域))。
5つ目は、AIにより常に最適な加工条件を提供できるという点。AI(人工知能)により常に最適な加工条件を提供する条件アドバイザ「LN Pro AI (LN Professional AI)」を標準装備。内蔵した放電基礎データと加工条件データベース、それらの関係性から所望する加工要素(加工形態、材質、面積、加工深さ、加工速度、面粗度、消耗 etc)を満たす最適加工条件とNCプログラムを推論・出力する。「ALプラス」シリーズでは、最適加工条件抽出エンジンを進化させ、新しい加工の選択肢を追加することで、面粗さや速度を向上した。
また、放電加工中のサーボ制御とZ軸ジャンプ動作の切り替えを極限まで短縮し、動作の最適化を行ったことで、加工時間を約10%短縮することに成功した。これらにより初心者から熟練者まで「ALプラス」シリーズのもつ新回路・新制御による加工性能を最大限に引き出すことが可能となる。
6つ目は、自動化・省人化の機能を拡充したという点。近年、機械稼働率アップや生産効率向上などを目的とした自動化システムへのニーズが高くなっている。「ALプラス」シリーズでは、様々な自動化システムに対応可能な本機構成を採用した。
作業者の段取り時の作業性を向上するとともに、各種自動化システム機器が容易に搭載できるよう、自動上下式加工タンク、上吊り式操作パネルを採用した。簡易的な自動電極交換システム(シャトルATC)、多くの電極に対応する大型・中型自動電極 交換装置(ATC-16/32)、ロボットを使用した本格的な自動化システムまで、様々な自動化ニーズに対応可能となる。
簡易的な自動化であればNC装置標準搭載の「スケジュール運転機能」によってロボットをコントロールしながらの連続加工が簡単にプログラムできる。これにより、搬送装置「SR12」などを組み合わせた外段取りの自動化システムを展開することができる。
7つ目は、エコ、省エネ、安心、安全という点。「ALプラス」シリーズは、”環境配慮型”工作機械として、省エネ・リサイクル/リユース・人に優しい・廃棄物削減・メンテナンスフリーなどに着目して開発を行った。構成部品の見直しにより部品点数削減を行うとともに、消耗品においても環境に最大限に配慮している。
2024年04月24日