東レは、5月15日Dow、COMEXI GROUP INDUSTRIES,S.A.U.、サカタインクス、SGK JAPAN/シャーク・ジャパン等と、このたび、リサイクル性と印刷プロセスにおけるCO2削減を実現し、かつ、経済性との両立が可能な表刷りモノマテリアルフィルム包装材技術を共同で開発したと発表した。
同技術は、世界的な低炭素・循環型社会の実現に向けた欧州食品プラスチック規制(包装材と包装廃棄物に関する指令)にも対応しており、食品や日用品用途での幅広い展開を進める。
フィルム包装材は、軽量性や透明性、加工のしやすさなどの特長を持ち、食品や洗剤の詰め替えパウチなどの包装用途に幅広く使われている。今後も世界的な人口増加に伴い、フィルム包装材市場は2023年の3300万tから、年率4~5%の成長が予測されている。しかしながら、現在用いられているフィルム包装材は、各種機能を有する異素材のフィルムを貼り合わせることで、様々な機能や形状を付与しているため、リサイクルが困難という課題がある。
一方、欧州連合(EU)では、2030年末までに全包装材の100%リサイクル可能化を掲げ、2024年4月には包装材廃棄物の削減に関する新法が暫定合意され、欧州の包装業界団体CEFLEXでは、包装材と包装廃棄物に関する指令に対応した、包装材のリサイクルに関するガイドラインを作成し、リサイクル適性の段階表示(RecyClass)や、推奨するフィルム包装材の構成・使用材料を提示している。
この中では推奨するフィルム包装材の構成として、90重量%以上をポリエチレンまたはポリプロピレンに統一化するモノマテリアル化、食品の保存性を確保するためのガスバリア層は5重量%以下、インキや接着剤等のその他の成分が5重量%以下と定めている。
これに対して、同社、Dow、COMEXI、サカタインクス、SGK JAPANは共同で、上記の推奨構成を満たしつつ、プラスチック使用量自体を削減すると共に、印刷工程で発生するCO2を大幅に削減可能な「表刷りモノマテリアルフィルム包装材技術」を開発した。
同包装材は、リサイクル性、CO2削減効果に加えて、製造プロセスが短くなることから、コスト削減や納期短縮につながることが期待される。
同社は、同取り組みにおいて、現在使われている有機溶媒現像ではなく、水での現像が可能な製版プロセスと、高精細な印刷品質を実現する新規フレキソ版 RESOLUCIAを、フィルム包装材印刷に適用した。Dowが開発した、高性能ポリエチレン樹脂INNATETMやAFFINITYTMをベースとする、ガスバリア性かつ、表刷り適性の高いポリエチレンフィルム、また、サカタインクスが開発したEBフレキソインキ・ニスを用いて、高パフォーマンスかつ操作性の高いCOMEXIのEBフレキソ印刷機で印刷物を作製した。尚、同印刷物は、包装材を構成するフィルムの枚数削減に繋がる「表刷り印刷」を適用している。
また、SGK JAPANのデザイン設計により、インキ使用量を抑えつつ意匠性を両立している。
今後、各社は、同印刷技術で連携し、食品や日用品向けフィルム包装への標準化に向けて、流通やブランドオーナーに対して開発品の提案を進め、フィルム包装業界の環境負荷低減や持続可能な社会の実現を目指していく。
なお、同技術を用いたフィルム包装材サンプルは、5/28~6/7 にドイツで開催される世界最大級の印刷展示会DRUPA 2024(開催地デュッセルドルフ)にて連携各社でのブースでの展示(Hall3/E83、 Hall3/C71)を予定している。
2024年05月16日