旭化成エレクトロニクスは5月29日、同社と欧州のエレクトロニクスおよびソフトウェアベースのシステムの研究機関であるSilicon Austria Labs(SAL)が、炭化ケイ素(SiC)を用いたパワーデバイスを利用した高電圧アプリケーションにおける電子ヒューズ(eFuse)技術の共同技術検証に成功したと発表した。
得られた検証結果より、このeFuse技術は自動車に搭載される充電器 On Board Charger(OBC)などのシステムの安全性を大幅に向上させ、部品やメンテナンスのコストを削減できる可能性があることが示された。
電気自動車をはじめとした高電圧アプリケーションでは、高効率化を進めるため、これまでのシリコン(Si)材料のものから、SiCや窒化ガリウム(GaN)といった次世代の半導体材料を用いたパワーデバイスへの切り替えが進んでいる。これらの次世代パワーデバイスを使用するシステムでは、過電流が発生したときにデバイスを保護し、コストのかかるメンテナンスを回避するため、これまでよりも高速にシステムをシャットダウンさせる必要がある。これらの理由から、これまで過電流対策として使用してきた機械式ヒューズよりも、高速応答性で優位なeFuseが求められている。
同社はSALと共同で技術検証を行い、このたび、機械式ヒューズを用いた従来の保護システムの課題を解決するeFuseシステムを開発した。同社が本年2月に発表したコアレス電流センサー「CZ39シリーズ」はその応答時間が100nsと非常に短く、また高精度であることが特長だが、同製品をeFuseに用いることで、過電流を即座に検出しシステムの高速なシャットダウンを実現する。
このeFuseソリューションは、OBCなどSiCやGaNベースのパワーデバイスを搭載した次世代の高電圧EVシステムで求められる過電流および短絡保護機能を提供する。さらに、eFuseを電流センシングにも活用することで、システムに流れる電流も効率的に調整することができるため、システム全体の部品点数を削減することが可能となる。
同社電流センサー事業プロジェクト長、高塚俊徳氏は、「この共同技術検証により、我々は eFuse技術の新たな標準を確立した。当社の専門知識とSALの研究能力を組み合わせることで、革新的な成果を実現できたことを誇りに思う。この技術が車載充電器をはじめとしたアプリケーションの更なる小型化と軽量化に貢献することを期待している。」とコメントしている。
SALパワーエレクトロニクス部門チームリーダーThomas Langbauer氏は、「旭化成エレクトロニクス社の最新の電流検出技術を活用することで、eFuseの応答時間を短縮し、また、SiCやGaN材料を用いた次世代パワーデバイスの保護性能を向上させることが可能となった。」とコメントしている。
同社は、6月にドイツ・ニュルンベルクで開催されるPCIM Europe 2024にて、SALとの共同研究の成果について詳細を発表する。
2024年05月30日