三井化学は5月29日、経営概況説明会を開き、橋本修社長が2021年にスタートさせた長期経営計画「VISION 2030」達成に向けた2024年度基本方針について言及した。
橋本社長は23年度の決算を振り返り、コア営業利益が962億円、当期利益が500億円、成長領域(L&HC、モビリティ、ICT)が1113億円だったが、「コア営業利益が低いのは、石油化学関連に関わるB&GM(ベーシック&グリーン・マテリアルズ)のマイナス要因が大きい」(橋本社長)。24年度はコア営業利益が1250億円、当期利益が730億円、成長領域が1260億円と全社増益と見込んでいる。
2024年度基本方針として、2030年の目標実現の通過点となるコア営業利益目標2000億円の達成への戦略・目標・達成時期を見直すと発表した。目標修正の詳細は、B&GMの再構築の度合や成長領域の動きなどを踏まえ、11月に修正値を公表するという。
橋本社長は「早期に元々の成長軌道へ戻すべく、事業運営、特に成長領域の成長スピードを加速していくために様々な施策を行う」と述べ、B&GMについては「残念ながら、B&GMの再構築の第1幕は十分でないという認識だ。ボラティリティの更なる低減とクラッカーの最適生産体制の構築など再構築の第2幕を積極的かつスピーディーに実施していきたい」との見解を示した。
成長領域のひとつであるモビリティ事業の計画の進捗状況については、自動車生産台数の回復に伴う販売拡大、太陽電池封止材など差別化領域での拡大、円安を含む交易条件により、モビリティ事業は1年前倒しでの達成を見込む。また、ソリューションビジネスの構築は苦戦しているものの、可能性のあるプロジェクトが出てきている状況だ。
事業ポートフォリオ変革の追求の方向性は、成長領域は高成長・高収益のグローバルスペシャリティ事業、B&GMは競争力のある誘導品を中核としたサステナブルなグリーンケミカル事業を目指していく。グリーンケミカル事業について、「この事業で稼いだキャッシュを再投資に回し、自立的にかつ着実な成長を果たしていける事業を目指していく」(橋本社長)。
VISION 2030の5つの基本戦略のうち、事業ポートフォリオ変革の追求として、モビリティ事業は24年度の目標値が600億円に対し、25年度の計画が600億円だったため、1年前倒しで達成できる見込みであり、最終年度の30年度の800億円+アルファは達成できると計画している。
またモビリティ事業の環境変化では自動車生産の回復、中国のOEM台頭、再生可能エネルギーの市場拡大、競合の新増設などを挙げる。モビリティ事業のうち、素材提供型ビジネスとしてタフマー、PPコンパウンド、アドマー、ルーカント、ミラストマーの特長ある製品を軸に自動車向けのみならず、新しい事業分野、例えばドローンびマーケットまで広げていく。
今後の課題と方向性は、成長市場×差別化への販売シフトの更なる加速、コンパウンド拠点の最大活用と連携の強化など強い素材提供型ビジネスの拡大を行っていく。また苦戦しているソリューション型ビジネスは新たなビジネスモデルの早期立上げなどを行っていくとしている。
橋本社長はモビリティ事業について「常に新しいものを開発追求し、競合に対して優位性のあるものを出していくこと、新たなマーケットを拡大していくということが非常に重要だ」と述べている。
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