積水化学工業らが実証完了 再生材活用促進のプロトタイプ

2024年06月06日

ゴムタイムス社

 日立ハイテク、日立製作所、積水化学工業は6月5日、リサイクルプラスチックをはじめとした再生材の活用促進を支援する「再生材マーケットプレイスシステム」のプロトタイプ版を用いた実証実験で同システムの有用性を確認し、事業化に向けて取り組みを推進していくと発表した。
 同システムは、再生材を原材料として購入したい買い手と、廃材を再生材として循環させたい売り手をつなぐマッチングや、一連の取引プロセスをオンライン上に実現するサービスを提供する仕組み。日立ハイテクが長年培ってきたプラスチック材料に関する知見やコア技術である計測・分析技術と、日立のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)や生成AIなどの先進デジタル技術を用いて、日立ハイテクと日立が連携し独自に開発しているものとなる。積水化学は、自社の製造工程で発生した廃材を同実証において提供するとともに、ユーザー視点で要望や改善点などを提案し、同システムの開発に大きく貢献している。
 同実証では、同システムのプロトタイプ版を活用し、廃材から加工した再生材が、買い手である製品メーカーの原材料として採用できるかを検討する一連のプロセスが、滞りなく成立することを検証した。この成果をもとに、同システムを活用した再生材の活用促進につながるサービスの2025年度事業化をめざして、今後も3社一体での資源循環に向けた取り組みを加速し、サーキュラーエコノミーおよび持続可能な社会の実現に貢献していく。

 気候変動、生物多様性の損失、廃棄物の増加、資源不足といった社会課題への対応の一つとして、昨今、サーキュラーエコノミーが注目されている。このような背景の中、製品メーカーや素材メーカーにおいては、再生材の活用や製造工程で発生する廃材の再資源化に対するニーズが高まっている。しかしながら、廃材由来の再生材はバージン材に比べて品質が安定せず、物量が変動しやすいため、取り扱いには専門知識や多くの手間が必要となる。そのため、再生材の買い手と売り手のマッチングが難しいという課題がある。
 例えば、買い手にとっては、リサイクラーの探索・選定や不純物混入のリスクがある再生材の品質を確認するための情報が必要だが、情報を集めにくいというのが現状の課題となる。また、売り手にとっても、買い手を見つけられないため再生材として活用できず、最終的には廃棄してしまうケースが見られる。
 これらの課題解決に向け、日立ハイテクと日立が連携して再生材の活用促進を支援する同システムの開発に取り組んでいる。日立ハイテクは、長年専門商社として培ってきた材料に関する幅広い知見やネットワーク、コア技術を用いた計測・分析の装置・サービスを生かし、材料に関するデータだけでなく、適切な再生材形成プロセスの条件の提案、再生材の品質管理など、再生材活用の課題解決に貢献するノウハウを同システムに提供する。日立は、AIなど先進デジタル技術を活用し、50社100事例を超える素材メーカーなどへのMI ソリューションの提供を通して培った知見・ノウハウを用いて同システムを開発する。また、同システムをさらに充実させるために、従来からMI推進に向けて協創を進める積水化学とともに同実証に取り組んだ。
 積水化学グループでは、「2050年にサーキュラーエコノミー実現」を掲げ、持続可能な社会をめざしている。生産工程において発生した端材などを原料に戻して再利用する内部リサイクル、廃棄物として処理する際にはエネルギーを含む再生原料として活用するなど、これまでさまざまな取り組みを進めてきた。今後さらなる再資源化率向上をめざし、同実証においては、自社の製造工程で発生した廃材を提供し、再生材の買い手およびリサイクラー、廃材の回収会社など同システムに関わる買い手・売り手の双方の立場として、有用性の検証に大きな役割を担っている。
同実証では、積水化学の廃材を再生材に加工後、再生材の品質や性能を日立ハイテクの分析装置などを用いて評価した。その後、日立にて再生材の品質および性能データを同システム上にアップロードし、このデータをもとに買い手(製品メーカー)が自社製品の材料として採用できるかを検討する、といった一連のプロセスが滞りなく成立することを検証し、同システムの有用性の確認および実証完了となった。

 同システムユーザー間(買い手・売り手)での再生材循環を支援するさまざまなサービスの提供に向け、開発を進めている。主に以下のマッチング支援機能と品質管理により、再生材の安全安心な取引を実現する。
 日立が持つ再生材を使いこなす知見や生成AIを用いて、質疑対応形式でユーザーが求める仕様や用途を明確化し、使いこなすための情報も含めて再生材をレコメンドすることで、実用的なマッチングを支援する(特許出願中)。これにより、例えば再生材の活用実績がない調達・製造部門などにおいても、容易にマッチングが可能になる。
 これまで日立が独自に収集してきたリサイクルプラスチックの材料組成・性能の実測データや、Lumadaの「材料開発ソリューション」を提供する中で培った知見を活用し、ユーザーが理想とする材料性能に応じた再生材のカスタム設計を支援する(特許出願中)。また、再生材の開発前に実現可能性も検証できるため、前例がない場合も実用的なマッチングが可能となる。さらに、再生材に添加物を混ぜた場合の物性や、バージン材をある比率で混ぜた場合の特性の予測なども可能なため、研究開発部門などの効率的な開発に貢献する。
 再生材の成形にあたっては、材料の配合や成形方法などの知見が不足しており、その検討や試作に多くの時間を要していた。日立ハイテクおよび日立が持つセンシング技術によって、再生材の品質から特徴量を抽出することで最適条件の提案をサポートし、導入のハードル低減に貢献する。また、日立ハイテクグループの分析装置を用いて、規制対象となる化学物質や再生材の性能に影響を与える異物など、再生材の品質確認をサポートするサービスも提供する。

 日立ハイテクと日立は、同実証の結果をふまえ、よりユーザーに活用いただきやすい環境の整備に向け、積水化学をはじめとする素材メーカーなどさまざまなステークホルダーと連携し、同システムを活用したサービスの2025年度中の事業化をめざしてOne Hitachiで挑戦していく。日立ハイテクはサービスの事業化後、販売元として幅広い販売網を生かして国内・海外の製品メーカーや素材メーカー向けに展開するため、同事業へ参画くださる企業(買い手・売り手)を募集していく。日立は、事業化に向けたシステム開発を日立ハイテクや積水化学と連携し推進していく。積水化学は、引き続き日立ハイテク・日立と連携し、2050年サーキュラーエコノミーの実現に向けた積極的な取り組みを推進していく。
3社は今後も、事業を通じた社会課題解決によって持続可能な社会の実現に貢献していく。

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