東洋紡エムシーのブレスエアー 王子動物園で褥瘡予防に活用

2024年06月11日

ゴムタイムス社

 東洋紡エムシーは6月10日、同社が製造販売する三次元網状繊維構造体「ブレスエアー」を用いたマットレスが、神戸市立王子動物園のオスのエゾヒグマ「ロクジ」の褥瘡予防に活用されたと発表した。
 ロクジは1992年1月20日に北海道・登別市で生まれ、1993年4月に王子動物園にやって来た。体長は約2m、体重は295kg。今年で32歳を迎え、人間で言うと80~90歳に相当するという。
 ロクジは2022年4月ごろから足もとがよろつき始め、下半身に麻痺が起こり、徐々に歩行も困難になった。また、寝て過ごすことが多いため、足の付け根など、骨が出っ張った箇所に直径約10cmの褥瘡(床ずれ)ができるようになり、ひどい時は骨が見えるような状態だったという。
 王子動物園でも患部に外用薬を塗ったり、ゴムマットや藁を敷いたりしてロクジの負担軽減を試みたが、改善は見られず、治療に専念するため2023年7月8日に観覧を中止した。
 一方で、同社の「ブレスエアー」を用いたマットレスは、過去に横浜市立金沢動物園で、自力で立てなくなったオオカンガルーやヒツジの褥瘡の発生を抑えることに成功していた。こうした事例をもとに、王子動物園でも同年7月21日から「ブレスエアー」のマットレスの使用を開始。300kgに近いロクジの体重を支えるため、通常の「ブレスエアー」よりも厚く(厚さ8cm)、素材も硬めのタイプを選んだ。
 飼育員や獣医師の方々の懸命な治療等のおかげで、マットレスを使用してから褥瘡はみるみる回復。4ヵ所あった褥瘡のうち3ヵ所の傷がふさがり、その結果、同年10月には観覧を再開するに至った。
 ロクジは、使用初日からマットレスに対して警戒する様子を見せなかったとのこと。現在も昼間は展示室のマットレスの上で過ごすことが多く、とても気に入ってくれている。
 同社は「高機能素材で世界の課題を解決する」をビジョンに掲げている。「ブレスエアー」はこれまで、高齢者介護施設のほかペット用の介護マットにも採用されていたが、エゾヒグマという大型動物の QOL(Quality of life)向上にも役立つことが分かった。これからも同社は、動物たちが少しでも快適で、より良い生活を送れるように、高機能素材の開発・提供に努めていく。
 神戸市立王子動物園獣医師加藤美津紀氏は、「「ブレスエアー」は体圧分散性が良いため、体重が1ヵ所に集中しない。また、通気性がよく蒸れないため、細菌感染を抑制しやすい点がロクジの回復につながったと考えている。水洗いもできるため衛生的。当園で飼育する 27 歳(推定)のツキノワグマも後ろ足が悪くなり始めているので、早めの対策として「ブレスエアー」のマットレスの使用を開始した。」とコメントしている。
 ブレスエアーは、同社が製造販売する熱可塑性ポリエステル系エラストマー「ペルプレン」を繊維状にして、立体的に接合した三次元網状繊維構造体。軽量・高反発で、耐久性や通気性に優れることから、1996年の上市以来、一般用・業務用寝具、介護用マットレス、新幹線などの鉄道車両の座席シート、オートバイやベビーカーなど幅広い用途で採用されてきた。
 最近では2023年に、市場から回収した同社製の三次元網状繊維構造体に由来する再生化原料を25%配合(重量比)した「ブレスエアーメビウス」、生分解性樹脂を原料に用いた「テルスエコー」を発表するなど、環境負荷低減に貢献する新製品を市場投入している。

「ブレスエアー」のマットレス(薄いグレー)の上で食事をしたり、寝転がったりするエゾヒグマ「ロクジ」

「ブレスエアー」のマットレス(薄いグレー)の上で食事をしたり、寝転がったりするエゾヒグマ「ロクジ」

「ブレスエアー」のマットレス(左)とサンプル(右)

「ブレスエアー」のマットレス(左)とサンプル(右)

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