バイオマス資源化で共同研究 ハイケムと北大がラボ設立

2024年06月17日

ゴムタイムス社

 ハイケムと北海道⼤学は6月13日、⽯油資源に依存しない未来のペットボトルや繊維の早期の実⽤化と普及に向け、バイオマス(植物由来)の資源化技術の共同研究を⾏う、産業創出講座「ハイケム北⼤R&Dラボ」を設⽴したと発表した。北海道⼤学が、最先端技術であるバイオマスの資源化技術について、研究成果の実⽤化・普及に向けて⺠間企業と共同研究を⾏うのは画期的な試みとなる。
 北海道⼤学が保有する触媒プロセス技術に関する学術的知⾒と、ハイケムがこれまで培ってきた環境分野における原料の調達、触媒や素材の⼯業化技術を融合して研究を進め、早期に事業展開を図ることで、化⽯資源に依存しないグリーンな化学品及び樹脂の実⽤化に貢献していく。
 ハイケム北⼤R&Dラボの⽬的は、化⽯由来合成樹脂・繊維を代替えするバイオマス由来物質の開発となる。期間は、2024年4⽉1⽇〜2026年3⽉31⽇まで、所在地は、北海道⼤学触媒科学研究所、研究統括は、中島清隆教授となる。
 ペットボトルや繊維の材料となるポリエチレンテレフタート(PET)は、世界で約8000万t⽣産されている。PETは⽯油などの化⽯資源を原料としており、CO2排出量などの環境負荷が⾼くなる他、⽯油の枯渇や⽯油価格の⾼騰などの課題を抱えている。これらの課題を解決するためにも、従来の⽯油資源を⽤いたPETに代わる、ボトルや繊維の早期の実⽤化が求められているが、まだ多くの開発技術が⼀般的な普及には⾄っていないのが現状となる。
 北海道⼤学の触媒科学研究所では、バイオマス(植物由来)からプラスチック原料への触媒変換反応において、国内でも最先端の技術開発を⾏っています。今般、トウモロコシ由来の⽣分解性プラスチック・繊維の商品化や⼀酸化炭素由来のエチレングリコール(PETの原料)を実⽤化に結び付けた実績を持つハイケムと北海道⼤学が共同開発を進めることで、未来のペットボトルや繊維の早期実⽤化を⽬指す。
 今般の北海道⼤学との共同研究においては、ハイケムが調達するバイオマス原料の超⾼効率で超⾼選択的な糖化プロセスや樹脂原料への誘導化プロセスの開発を進めるとともに、PET(ポリエチレンテレフタレート)の代替として注⽬を集める、新たなバイオマス(植物由来)ポリエステルの新規重合⼿法の開発に取り組む。これらの技術確⽴により、社会的要請となるCO2排出量や化⽯資源の使⽤削減に資する、グリーンな化学品及び樹脂の実⽤化に貢献していく。
 ハイケムは2019年よりポリ乳酸(PLA)の世界最⼤のメーカー豊原集団と事業戦略パートナーシップ契約を締結し、PLAを始めとする⽣分解性材料やバイオ材料の⽇本市場の開拓を⾏っている。また、2021年にはトウモロコシ由来の新しいPLA繊維として⾃社ブランド「Highlact(ハイラクト)」を発表した。欧⽶での営業活動を活発化させており、ポリエステルの代替えとしてのPLA繊維のグローバルな普及に努めている。
 またハイケムでは、PETの原料となるエチレングリコールを⾮⽯油由来で製造するSEG技術の実⽤化に取り組んでいる。中国のエチレングリコール需要の半分以上となる約1000t/年のライセンス契約を締結し、600万t/年以上が商業運転を開始し、⼤量⽣産による普及を実現している。
 更に、カーボンリサイクルにつながる、CO2由来の繊維の開発にも取り組んでいる。2020年にはNEDOのプロジェクトとして、CO2を原料とするパラキシレン製造に関する開発に着⼿しており、ハイケムは、同研究の触媒開発を担っている。またポリエステルのもう⼀つの原料となるエチレングリコールについては、ハイケムが保有するSEG技術をベースに、CO2由来のグリーンSEGの商業化に取り組んでいる。

北海道⼤学触媒科学研究所中島清隆教授

北海道⼤学触媒科学研究所中島清隆教授

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