産総研らが共同開発 新規抗血栓性コーティング

2024年07月11日

ゴムタイムス社

 産業技術総合研究所は7月10日、同研究所生命工学領域連携推進室、寺村裕治連携主幹が、ジャパン・メ ディカル・スタートアップ・インキュベーション・プログラム(JMPR)、N.B.Medicalと共同で、脳動脈瘤治療用ステントのための新規抗血栓性コーティングを開発したと発表した。
 血液と接触する医療機器において、血栓の発生を抑制することは重篤な合併症を回避する重要な要素となる。血管内に異物を留置するため、ステントを使用した患者は常に血栓性合併症のリスクにさらされている。そのため抗血小板剤の服用が必須となる。また、血栓発生のリスクを低減するためにこれまでに多くの抗血栓性コーティングが研究してきた。
 従来のコーティングは、タンパク質の非特異的吸着を抑制することで抗血栓性を発揮するという原理が主流だった。タンパク質吸着の抑制は同時に細胞の接着を阻害することも意味する。そのため従来技術において、抗血栓性と細胞接着性はどちらかを向上させるともう一方は低下する相反関係にあった。
 一方で開発した新規抗血栓性コーティングでは原理が異なる。この技術は血中の非凝固系タンパク質を優先的に吸着することで、ステント表面から生じる血液凝固反応が抑制される。タンパク質の吸着を抑制するのではなく制御する同技術では、抗血栓性を発揮すると同時に細胞接着性が向上している。細胞接着性の向上によって、ステントが血管に取り込まれる速度を増加する。ステントが血管内に早期に取り込まれることは、治療の早期完了を意味する。
 この技術により、ステント治療で課題とされてきた血栓性合併症の発生を抑制する。さらに治療期間が短縮化されて抗血小板剤の減薬が可能となり、患者の負担軽減だけでなく医療費の削減にも貢献する。
 今回開発したコーティングは抗血栓性と細胞接着性を両立したステントを可能にする。 この技術が示した抗血栓性により、ステント治療で課題とされてきた血栓性合併症のリスクを低減する。さらに 細胞接着性が向上したことで、ステントの血管内皮化を促進し、血管への取り込みが早まる可能性を示した。細胞接着性の向上によって治癒が促進されれば治療期間が短縮化し、抗血小板剤の減薬が可能となることで患者の負担が軽減されるだけでなく医療費の削減にも貢献できる。

左従来右新規のコーティング

左従来右新規のコーティング

コーティングステント留置

コーティングステント留置

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