三洋化成工業は、水溶性、油溶性用途ともに使用可能で、鉄や非鉄、各種合金まで幅広い金属に対し高い防錆効果を発揮するマルチメタル(多金属)対応の防錆剤「サンヒビター NO70」を開発した。
新規材料のサンヒビター NO70は、アミン系の吸着皮膜型防錆剤。同社が得意とする界面制御技術を活用して、親水性、疎水性のバランスを精密に調整し、組成の最適化を行うことで、水溶性防錆剤の課題であった泡立ちや腐敗、油溶性防錆剤の課題であった除去性、安全性などを解決することに成功した。
サンヒビター NO70の用途例は、水溶性では水溶性加工油(工作油剤)や水溶性洗剤、水系塗料に配合するほか、水溶性防錆剤の原体としても使用可能。また、油溶性は金属加工油(工作油剤)や機械潤滑油の配合時に添加したり、タンクや配管の冷却水などに溶解させたり、防錆剤(油)調合用の防錆原体とするなど幅広い用途で使用できる。
8月21日に京都本社とオンラインで開いた会見で同社は「サンヒビターシリーズは30~40年前から上市しており、現在7~8品目をラインナップしている。それぞれ水溶性と油溶性に分けて特化した製品を販売してきたが、水溶性・油溶性のいずれの用途にも使用可能な製品を発売したのは今回が初めて。業界としても珍しい」と語った。
なお、同社は防錆剤市場で「メジャーなポジションにある」(同社)と指摘。サンヒビター NO70は、すでに数社の顧客で採用が決まったほか、サンヒビターシリーズを使用している20~30社の顧客へサンプル提供を展開中。今後は顧客の反響を見ながら国内外で拡販に力を入れていく考えだ。
防錆剤は、金属表面を保護して、錆の原因となる水や酸素との接触を遮断して、錆びを防ぐ働きがある。一方、加工や塗装前には防錆剤の除去が必要となる場合がある。吸着皮膜型防錆剤は、極性基が金属表面に吸着し、疎水基が金属表面に密に分子配列することで、酸素や水を遮断し防錆効果を発揮するもので、簡単に皮膜を形成できるだけでなく、必要に応じて脱脂洗浄で除去することも可能であり、使い勝手が良く広く使用されている。
吸着皮膜型防錆剤は、水系での加工や洗浄、塗装、冷却水、チラーなどに使用する水溶性防錆剤と油系の加工、塗装、機械潤滑油などに使用する油溶性防錆剤に分けられる。水溶性防錆剤は油を使わないため火災の危険性がない、除去しやすい、といった特長がある半面、油溶性防錆剤に比べて防錆性能が低い傾向にあり、泡立ちや水の腐敗に対して対策が必要などの課題があった。
一方、油溶性防錆剤については、防錆性能が高い点に特長があるものの、除去性が悪い、引火点が低く火災の危険に注意が必要などの課題があった。サンヒビター NO70は水溶性、油溶性防錆剤それぞれの特長を維持したまま、これらの課題を解決する製品となっている。
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