東洋紡エムシーは8月27日、大林組が国内で初めて実海域(青森県の沖合)で実施する浮体式洋上風力発電施設のTLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型浮体設置実験に参画し、大林組、東京製綱繊維ロープとともに、浮体と海底をつなぐ係留索の共同研究開発を実施すると発表した。
実験で用いる係留索には、同社が新規開発した超高強力ポリエチレン繊維「イザナスULC」を用いたロープが採用され、ロープの製造は東京製綱繊維ロープが行った。
また、同実験を通じて、「イザナスULC」は、浮体式洋上風力発電施設向けのロープ用原糸として、国内で初めて日本海事協会の承認を取得した。「イザナスULC」は、従来の「イザナス」の高強度・高弾性率の特性を維持しつつ、その課題であった耐クリープ性能が大幅に向上している。それにより、従来品に比べて疲労耐久性が向上し、長期間浮体の定着を安定化させることが期待される。
同社は2030年までに、敦賀サイトにある「イザナス」の生産設備を現状の2倍である年産2000tに引き上げる構想となる。洋上風力発電の社会実装に向けて高機能素材の開発・生産を進めることで、再生可能エネルギーの普及とカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。
2024年7月、大林組は青森県下北郡東通村岩屋の沖合3kmの海域に、緊張係留方式のTLP型浮体を設置した。TLP型浮体は海底のアンカーと係留索で結び、浮体の浮力によって生じる緊張力を利用して基礎として機能させるが、この係留索に「イザナスULC」を用いたロープが採用された。実験では実際の波浪条件における浮体の動揺安定性や係留索の緊張力の変化に加え、係留索と浮体との適用性などが検証される。
超高強力ポリエチレン繊維「イザナス」は、ゲル紡糸法を用いて製糸した高機能繊維で、釣り糸や船舶係留索、野球場の防球ネットなどに採用されている。「イザナスULC」の開発では、従来の製糸工程などを改良し、「イザナス」が持つ軽量かつ高強度・高弾性率、高耐候性などを維持しながら、耐クリープ性能を実現した。
2024年08月28日