住友化学は9月11日、シンガポールの同社100%子会社である住友化学アジア(住化アジア)における、MMAモノマー(メタクリル酸メチル)およびPMMA(メタクリル樹脂)の各製造設備について、3系列中2系列を同月末目途に停止することとしたと発表した。同拠点でのMMAモノマーは約8割、PMMAは約7割の生産能力削減となる。
PMMAは、合成樹脂の中でも抜群の透明性と耐候性、美しい光沢を持ち、自動車のテールランプや看板、水族館の水槽、液晶ディスプレイの光学部品などに幅広く使用されている。MMAモノマーは、PMMAの原料や塗料原料などとして用いられている。
MMAモノマーおよびPMMAの足元の市況は、大幅な低迷期に比べると回復の兆しが見える一方、同製品における、アジアを中心とした生産能力の拡大は今後も継続することが見込まれる。このような環境の中、同社グループにおいては、特に汎用品の領域において、中長期的に安定した販売量とマージンを確保していくことが困難になるものと判断した。同再編実施後、同社グループは、技術的な強みを生かしたPMMAの特殊品・高付加価値品分野へと注力することで、市況動向に左右されない安定した事業構造へ転換していくことを目指している。
また、同社は、石油化学関連事業について、既存製品のポートフォリオや生産体制の見直しを加速するとともに、環境負荷低減技術による価値創造に大きく舵(かじ)を切ることとしている。
PMMAについては、22年12月に愛媛でケミカルリサイクル実証設備を完成させ、早期の社会実装に向けた技術検証やマーケティング活動を進めている。24年5月には、米大手ライセンサーであるルーマス・テクノロジー社との間で、同リサイクル技術についてのライセンス供与・商業化に関する協業契約を締結するなど、MMA関連のソリューション提供に注力していく。
同社は、現在、短期集中業績改善策の一環として、採算性やベストオーナーの視点に基づき、事業の再構築を加速させている。こうした取り組みを着実に進めることにより、24年度のV字回復をより確固たるものにするとともに、抜本的構造改革に取り組んでいく。
2024年09月12日