旭化成は9月11日、同社とIndustrieDe Nora S.p.A(以下「De Nora」)が、両社の保有するアルカリ水電解システムの技術・ノウハウ・実績を基に、コンテナ型のアルカリ水電解システム(以下「 本システム 」)について、共同で開発・評価・販売・検討を進める覚書(MOU)を締結したことを発表した。
De Noraは電気化学分野における高性能電極用触媒の技術力と知見を持ち、食塩電解分野でも電極や電解槽の開発、製造および販売におけるリーディングカンパニー。今回のMOUは、両社の食塩電解分野における長年の経験とノウハウを活用し、水電解分野における開発、生産、および販売・サポート面で密接な協力体制を構築することを目的として締結された。
近年、化石燃料に替わるクリーンエネルギーとして、水電解によって製造されるグリーン水素に対する期待と需要は世界中で拡大しており、2030年の世界の水電解槽導入容量は累積で約300GWへ急速に拡大することが見込まれている。
そのような状況下で、電解分野に新規参入する企業の増加が見込まれる中、今回両社が開発を進めるシステムは、同社が開発を進めてきた大規模アルカリ水電解システム「Aqualyzer」と比較して小型であり、主に導入コストや設置スペース、納期などの面で負担が少なく、新規参入企業を中心に需要が拡大することが見込まれる。同時に、水電解装置の導入にあたっては、長期運用を見据えた顧客サポートの体制構築や、実績と信頼の確立が必要とされている。
同社はイオン交換膜法食塩電解プロセス事業において世界各国への販売チャネルや、長期運用を前提としたデータドリブンのサポート体制を有している。これにより、電解技術に対して十分な経験を持っていない顧客に対して強固な支援を実施することが可能となる。
本システムは 1~7・5MWと設備容量を任意に調整できる加圧小型電解槽を用いており、水素製造に必要な機器類をすべてコンテナに収納した仕様で、水電解システムの新規導入を目指す企業のエントリーモデルや、小規模製造装置、水素ステーションに併設するような分散型の設備に適している。一方で、旭化成が持つ大規模アルカリ水電解システム「Aqualyzer」は、常圧大型電解槽を用いた大量かつ安価な水素製造を得意としており、双方の特長とニーズは大きく異なっている。このように、異なる需要に合致したラインアップを揃えることで、幅広い水電解需要にも対応していくことを目指していく。
同社執行役員でグリーンソリューションプロジェクトの事業開発担当である竹田健二氏は「新規水電解システムの展開に向けた両社の取り組みは、顧客にとって水電解の導入ハードルを下げ、水素市場の発展に広く貢献するもの。電気分解の分野で世界を長年リードし続けているDe Noraの技術力および経験と、食塩電解事業で培った当社の顧客体験を重視したビジネスの知見が、本システムの展開に重要な役割を果たすと考えている。」とコメントしている。
De NoraのChief Executive OfficerであるMichèle Azalbert Paolo Dellacà氏は「De Noraは、グリーン水素製造用の小型電解槽の開発において、同社との協業開始を発表できることを誇りに思う。2社のリーディングカンパニーがそれぞれの強みと専門知識を組み合わせることで、小型の水素製造システムに対する世界中の需要の高まりに対応することができ、本協業は持続可能なエネルギーソリューションに向けた重要な一歩となる。当社は、モビリティや製鉄、その他水素供給が困難な分野を含むさまざまな用途に水素製造用の簡単に設置できるコンテナ型電解槽システムを提供している。このシステムは、『水素バレー』として特定された地域における分散型水素製造を効果的にサポートし、化石燃料への依存を徐々に解消していく。旭化成との戦略的パートナーシップにより、当社はこの技術をさらに発展させ、アジアをはじめ世界中で本システムの可能性を十分に引き出すことを期待している。この提携により、現在建設中の最新の電解槽製造拠点であるイタリアのギガファクトリーでの生産が加速することを期待している。」とコメントしている。