東レは9月13日、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)および浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備(FSO)向けに、炭素繊維複合材料(CFRP)を用いた真空含浸補修技術「現場VaRTM工法」を活用した、腐食による設備の減厚箇所への標準的な船舶補修工法として世界で初めて、アメリカ船級協会(ABS)の型式承認を取得したと発表した。
ABSは世界有数の船級協会であり、世界のFPSOおよびFSOの約半数がABS認証船である。今回の型式承認取得により、ABS認証船は同社が特許を有する「現場VaRTM工法」が適用可能となり、船舶補修の際に必要なエンジニアリングレビューや検証に要する時間を削減できる。
FPSOやFSOの設備保守は、一般的に、洋上での鋼材による補修が行われているが、溶接は火気工事を伴うため、石油やガスの生産を停止する必要がある。今回ABSの型式認定を取得した「現場VaRTM工法」は、2020年に三井海洋開発と同社が共同開発し、補修対象の既設鋼構造物の表面に、同社の強度と弾性率のバランスに優れる炭素繊維を使用した織物「トレカRクロス」を配置し、その上からフィルムで被覆後、真空ポンプで真空状態を形成し、エポキシ樹脂を注入・硬化させて形成したCFRPと鋼構造物を一体化させる技術である(特許取得済)。
「現場VaRTM工法」により、従来の鋼材を用いた補修法と比べ、資機材の搬入が容易で、少人数・短期間での施工が可能となり、かつ、火気工事を伴わないため、補修工事が石油やガス生産に与える影響の最小化が期待できる。
同社は今後も「現場VaRTM工法」をさまざまな産業用途へ展開するとともに、FPSOとFSOの補修補強技術の開発を推進し、市場のニーズに迅速に対応していく。