日本グリーン電力開発が製造成功 ココナッツオイルからSAFを

2024年09月25日

ゴムタイムス社

 日本グリーン電力開発は9月18日、NEDO事業である「低圧・低水素消費型多機能触媒利用の植物由来SAF実証サプライチェーンモデルの構築」(以下、本事業)において、国立大学法人東京農工大学、ハイケムと共同で開発中の触媒を用いて世界で初めて食用に適さないココナッツ(以下、規格外ココナッツ)のオイルから100%バイオマス由来SAF(以下、ニートSAF)の製造に成功したことを発表した。なお、今回製造したニートSAFは国際品質規格である「ASTM D7566 Annex A2」(以下、本規格)に適合している。

 規格外ココナッツの持つ構造は従来のジェット燃料に近く、燃料変換におけるプロセスや水素消費量の削減が期待されている。今回の成果によって生産効率、コスト、環境の面で優位となるSAF量産の可能性が示され、さらにスケールアップした実証に向けて大きく前進した。

 2022年時点で、世界のSAF供給量は、世界のジェット燃料供給量の0・1%程度とされており、量産と普及が急がれている。そうした中、ココナッツは全世界で年間7千万~1億トンが生産され、生産量の30%相当が未成熟または芽が出てしまうなど、食用に適さない規格外と推定されており、食と競合しないSAF原料としての活用に期待がされている。
 本事業で同社は、ココナッツの一大産地であるインドネシアにおいて規格外ココナッツの選別・調達やオイル化などの原料開発から、ココナッツオイルの燃料変換に適した触媒開発、日本国内における実際のSAF製造に至るまでのサプライチェーン構築に取り組んでいる。
 本年3月には本事業での規格外ココナッツの定義づくりと選別システムの構築により、規格外ココナッツがSAFの原料としてICAOの定めるCORSIA認証ポジティブリストに登録がされたところであり、今回の成果は原料開発と並行して取り組んでいた触媒開発の結果が得られたものとなる。

 同社は東京農工大学、ハイケムと共同で本事業で開発を進める触媒を用いてインドネシアで調達した規格外ココナッツを絞ったオイルから、ニートSAFの製造に成功した。今回、航空燃料としての国際品質規格である本規格の適合を確認したことにより、CORSIA認証ポジティブリストへの登録と合わせて、原料調達と製造技術の面からサプライチェーンの構築に向けて準備を進めた。
 規格外ココナッツから搾油したオイルは、構成する脂肪酸の分子構造(炭素数/鎖長)が他のSAF原料に比べて航空燃料に近いため、比較的少ないプロセスで、かつ水素消費量を抑えてニートSAFを製造できる可能性がある。
 本事業では、この分子構造による省プロセス・低水素消費量といった特徴に適合し、さらに単独で複数のプロセスを効率的に改変する機能をもった多機能触媒の開発を進めてきた。
 この多機能触媒などを使って製造したニートSAFについて、航空燃料としての品質規格である、本規格への適合が確認されたことから、生産効率、コスト、環境の面で優位となるSAF量産の可能性が示され、さらにスケールアップした実証に向けて大きく前進した。

 SAF原料として必要なCORSIA認証ポジティブリスト登録に加え、現在、温室効果ガス(GHG)削減標準値(デフォルト値)の策定も進んでおり、今回のASTM品質規格適合確認により環境と品質の両面でのSAF製造に向けた条件が整いつつある。さらにはインドネシア州政府から地域経済活性化の観点で本事業に対する後押しがあるなど、原料収集地域での理解と協力も進んでいる。

 多機能触媒についても耐久性などを確認しながら、生産効率、コスト面、環境面でより最適な製造フローの設計に取り組んでいる。引き続き原料開発と触媒開発の両面で、本事業の実用化を推進していく。

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