東洋紡は10月29日、同社がこのほど栃木県宇都宮市の宇都宮工場内に新設する積層セラミックコンデンサ(セラコン)用離型フィルムの製造設備が完成し、同日に始動式を開催したと発表した。2025年春頃の商用生産開始を目指す。
AIサーバーやデータセンターなどの高性能IT機器の普及に伴い、今後も世界規模で拡大が見込まれるセラコンの需要に対応するため、生産体制を強化する。
セラコンは、電流を調整したり、電気を一時的に蓄積したりする汎用的な電子部品として、さまざまな電子回路に搭載している。人工知能(AI)の開発や運用に必要なサーバーやデータセンターなどの高性能IT機器の普及、スマートフォンの高機能化、電装化・自動運転といった自動車産業などの発展を受けて需要がますます拡大しており、今後も年率7%以上での市場の成長が見込まれている。
同社はこうしたセラコンの需要増に対応するため、2021年に宇都宮工場に離型フィルム設備の新設を決定。このほど新設備が完成し稼働を開始した。
新設備では、セラコンの製造工程に不可欠な離型フィルムを製造する。製膜した原反PETフィルムに別途コーティング処理を行うことで優れた平滑性を実現するオフラインコーティングと、製膜工程においてコーティング層を形成し原反から離型フィルムまでを一貫生産することで生産効率を高めたインラインコーティングの両方の生産方式に対応が可能。今後、更なるセラコン需要の拡大が見込まれる中、ミドルからハイエンド品まで幅広い顧客のニーズに柔軟に対応できる生産体制の構築を図る。また、環境負荷の低減を目指し、顧客との協業により使用済みの離型フィルムをリサイクル原料として再利用する取り組みも推進していく。
生産開始に先立ち、同日に開催された始動式には、栃木県や宇都宮市をはじめ、協力会社の来賓や同社関係者合わせて約50名が参加。同社代表取締役社長の竹内郁夫氏は、「原反の製膜から離型層のコーティング加工まで一貫して行うことのできる強みを最大限に活かし、デジタル社会の進化を支える工業フィルム事業の成長を実現していく」と決意を述べた。
2024年10月31日