東レは11月11日、タイを拠点とする大手石油化学会社であるPTT Global Chemical Public(GC)と非可食バイオマスを原料としたアジピン酸(バイオアジピン酸)の量産技術検討に関する覚書(MOU)を2024年11月に締結したことを発表した。
今後、同社とGCは共同でタイおよび日本にて量産技術検討ならびに商業化に向けた実現可能性調査を進め、事業性があると判断した場合、2030年までに数千トン規模のムコン酸およびバイオアジピン酸の商業化を目指す。
同社とGCは、2023年から、同社が84%の株式を所有するタイ国のCellulosic Biomass Technology (CBT)で製造される非可食バイオマス由来の糖を原料とし、ナイロン66の原料となるムコン酸とバイオアジピン酸を製造する技術開発を共同で行い、世界で初めてパイロットスケールでの製造に成功した。
同製造技術では、GCは、独自の発酵技術により、非可食糖を短時間でムコン酸に高収率で変換する。さらに、同社は、独自の水素化処理プロセスにより、ムコン酸から高純度のバイオアジピン酸を高収率で製造することができる。得られたバイオアジピン酸は、石油由来のアジピン酸と同様に、ナイロン66の原料として樹脂・繊維などに利用することが可能。また、この製造プロセスでは、アジピン酸を化学合成法で製造する場合に副生物として生成される温室効果ガスの一酸化二窒素(N2O)が発生しない。
将来的には、資源豊富なタイ国での農業残渣を利用して、数万トン規模でバイオアジピン酸を製造するサプライチェーンを構築するとともに、環境配慮型のナイロン66の製造に繋げ、資源循環社会の実現や温室効果ガスの削減に貢献していくとしている。
なお、本調査は、「経済産業省・令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査)」に採択されている。
同社は、カーボンニュートラルの世界の実現に向け、2030年までに基幹ポリマー製品の原料のうち20%を再生資源化することを目標とし、バイオマス由来材料への転換等の技術開発に取り組んでいる。今後も、持続可能な循環型社会を実現するために研究・技術開発を推進し、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいくとしている。