旭化成は11月15日、タイで生産するアクリロニトリル(AN)を撤退すると発表した。同日開催された株主総会で同社とPTT Global Chemical(PTTGC社)が折半出資し、タイに所在する持分法適用関連会社PTT Asahi Chemical(PTTAC社)の事業の終了および工場設備の撤去を決定した。
PTTAC社は2006年にプロパン法アクリロニトリル(AN)および、ACH法メチルメタクリレート(MMA)および硫安の製造・販売を行う会社として設立された。その後、東南アジア顧客向けの製造拠点として事業を継続してきたが、22年頃よりの経済環境の低迷長期化および原料コストの上昇による競争力の低下に加え、中国での生産能力の増強を背景とする需給環境の悪化により厳しい業績状況にある。
PTTGC社と協議の結果、PTTAC社が今後健全に事業を継続することは困難との判断で一致し、合弁事業を終了することで合意した。
ANは、一般的に繊維や樹脂の原料となる液体のモノマーで、主にABS樹脂の主成分の一つとして電化製品等に広く使用されている。PTTACが製造するプロパン法ANは、従来のプロピレン法とは異なり、プロパンから直接製造する同社独自の技術となっている。MMAは、主にアクリル樹脂の原料として使われるモノマー。PTTACでは、AN製造過程に副生される青酸を主な原料として製造されている。
同社では今後、決議した撤退方針に基づいたスケジュールで進めていく。なお、PTTAC社の会社清算は、工場設備の撤去等を進めたのちに決定をする予定。24年10月 31日工場生産の終了、24年12月31日販売の終了、25年~28年工場設備の撤去工事。今回、事業の一部撤退という形になったが、同社は持続的な企業価値向上に向けて、グループの競争力強化に尽力していく。また、ANおよびMMA各製品においては、アジアを中心とした取引先に対し、引き続き製品の安定供給に努めていく。
PTTAC社の概要。本社所在地タイ・ラヨーン県、株主構成旭化成50%、PTT Global Chemical50%、設立2006年 8月1日、操業開始2013年1月1日、従業員数235人(同社出向者は5名)、事業内容プロパン法ANおよびACH法MMAおよび硫安の製造・販売。