住友理工は11月18日、ギンレイラボと共同で、医薬品などの効能確認や安全性評価で使用される生体模倣システム:MPS(Microphysiological Systems)の開発を進めており、このたび、研究機関から製薬企業まで幅広いユーザーに基礎実験ツールとして利用してもらうためのエントリーモデル2製品の開発が完了し、11月下旬より順次販売開始することを発表した。
フロー培養デバイスについて、生体内では、血流によって臓器や細胞に酸素と栄養素が供給されている。それぞれ離れた位置にある臓器は、直接接触せずに血液を介して情報や物質を双方向に交換、あるいは一方向性に作用しているため、MPSにおいて血流の役割を担う培養液の流れをデザインすることが重要。
同社はコア技術の 1 つである「流体制御技術」を活用して、ギンレイラボの水平型共培養容器専用の培養液フローを設計、開発した。本製品は一方向送液のほか、4つあるポートを使って複数種の培地を同時に流せる仕様になっており、既存のシリンジポンプ等を使って簡便に送液実験を行うことができる。また、容器間にフィルタを挟むことによって、容器から容器へ移行する細胞分泌物質の種類や量を制御でき、細胞同⼠が混ざらない状態で観察が可能になるため、近年注目されている脳と腸の相互作用研究や、細胞間の情報伝達に関わる物質であるエクソソームの機能解明など、様々な実験への展開が期待できる。
3D培養デバイスについては、ヒトの臓器は立体的であり、平面的な細胞培養(2D培養)よりも生体内に近い環境を構築する方法として、スフェロイドやオルガノイドと呼ばれる細胞の凝集塊を用いた「細胞3D培養」が注目されている。
本製品は、底面にU字型の微細なウェル(くぼみ)がパターニングされた培養プレートで、同社独自のコーティングを施しており、細胞の播種のみでウェルの中で細胞同⼠が接着し、簡便に多量の凝集塊を作製することができる。薬剤のスクリーニング用途や、凝集塊を規則的に配列させたスフェロイドアレイとしての展開に加え、デバイス底面のデザインを変更することで、神経細胞の評価など用途に応じた活用が見込める。
同社とギンレイラボは、2022年よりMPSの開発をスタートし、2023年より開始したカスタムサービスでは、現在、製薬・化粧品メーカーとの協働プロジェクトが進行している。2024年からは海外展開も開始しており、今後は、抗がん剤評価モデルや脳腸相関モデルなど、様々なアプリケーションを構築し、創薬支援ビジネスの展開を加速させていくとしている。