エンジニアリングプラスチック(エンプラ)とは、明確な定義はないものの、耐熱性(100℃以上)と機械的強度に優れたプラスチックを指す。エンプラは、汎用エンプラとスーパーエンプラに大別される。汎用エンプラは、PA(ポリアミド)やPOM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)の種類があるのに対して、スーパーエンプラは150℃以上の耐熱性を有するプラスチックであり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やLCP(液晶ポリマー)、PAI(ポリアミドイミド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などがある。
そのなかで、今回のエンプラ特集では、LCPやPPSに関する各社の需要動向や注力グレード、サステナブルな取り組みを紹介した。
LCP(液晶ポリマー)は、耐熱性や難燃性、成形流動性に優れた特性を有するスーパーエンプラ。用途はコネクタやリレー、スイッチなどの電気・電子部品向けをメインに、電装部品やエンジン部品など自動車向けに用いられている。一方、PPS(ポリフェニレンサルファイド)は、耐熱性や剛性、寸法安定性に優れたスーパーエンプラ。自動車用途が全体の6割を占め、そのほか電気・電子部品、エコキュートなどの配管部材、OA機器など幅広い機械部品に使われている。
LCP、PPSの需要動向をみると、コロナ禍の巣ごもり需要を受けて、スマホやタブレットの需要が急拡大し、電気・電子部品向けの需要が拡大したことや、コロナ収束後に自動車生産が急回復したことにより、LCPやPPS需要は21年から22年春先にかけて大きく伸展した。ただ、22年夏頃からスマホのコネクタなど電気・電子部品向けは、雲行きが怪しくなり、23年年明けに入り急激に落ち込んだ。半導体・電子部品のサプライチェーンで在庫過多が鮮明となったためで、しばらく調整局面が続いたが、23年末にようやく底入れの兆しが出始めた。電気・電子部品向けはAIサーバー向けが好調。自動車向けも部品や車載向けは緩やかな回復が続いている。とはいえ、各社とも需要の力強さは感じておらず、本格回復はもうしばらく先とみているようだ。
また、汎用樹脂市場では中国メーカーの工場新増設や稼働が進んでいるが、PPSやLCPといったスーパーエンプラでも中国メーカーの勢力が強まっている。PPSでは新和成控股集団有限公司(NHU)、LCPでは、金発科技有限公司や寧波聚嘉新材料科技有限公司(JUJIA)といった中国企業が存在する。「価格で対抗するのは難しい。日本メーカーとしては品質を重視した差別化グレードを投入し、シェアを高めていく」(エンプラメーカー担当者)としている。
2024年11月27日