島津製作所が開発成功 小型・堅牢な光格子時計

2024年11月22日

ゴムタイムス社

 島津製作所は11月21日、世界初、装置容量250Lの小型・堅牢な超高精度光格子時計の開発に成功したと発表した。
 光格子時計の小型化は、高精度な時間計測技術の広範な応用を可能にし、科学技術の進展だけでなく社会インフラや新たな技術革新にも大きな影響を与える。
 同研究開発では、従来の可搬型光格子時計の約1/4の容量250Lの装置開発に世界で初めて成功した。今後、さらなる小型化・堅牢(けんろう)化を図り、光格子時計の社会基盤への実装を進める。
 JST未来社会創造事業において、東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授は、装置容量250Lの小型・堅牢な超高精度光格子時計の開発に世界で初めて成功した。
 光格子時計は原子時計の一種で、現在の「秒」の定義の基準となっているセシウム原子時計に対して100倍以上の精度を実現する。その精度はおよそ100億年に1秒の誤差に相当し、非常に高い精度であることから、光格子時計は次世代の「秒の定義」の有力な候補として注目されている。
 今回の開発では、その装置体積を従来の920Lから250Lへと約1/4に小型化することに成功した。これにより、時間標準としての利用にとどまらず、相対論的センシングなど、さまざまな研究現場や応用分野での利用が期待される。
 同研究は、理化学研究所開拓研究本部/光量子工学研究センター兼任の高本将男専任研究員、同社、日本電子と共同で行った。
 共同研究グループは、JST未来社会創造事業で「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」の研究開発に取り組んできた。その成果として、原子の時計遷移を分光するための物理パッケージや、原子のトラップと分光を制御するためのレーザー/制御システムをそれぞれ小型化した。
 光格子時計の小型化で移設が容易になったことにより、さまざまな設置環境にて一般相対性理論を利用した相対論的センシングに応用できる。例えば、数センチメートル精度のプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視や、数時間から数年かけて起こる地殻変動(標高変化)の精密な観測、超高精度な標高差計測・測位システムの確立など、光格子時計が将来の社会基盤として、多様な研究現場・用途目的にも貢献することが期待される。

光格子時計の物理パッケージ

光格子時計の物理パッケージ

光格子時計のレーザー/制御システム

光格子時計のレーザー/制御システム

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