日本ゼオンは12月3日、このたび異なる企業間の実験データを連携させることに成功し、新たに構築されたAIモデルの物性予測性能が向上することも実証したと発表した。
今後は、同取組みをさらに進化させ、秘密計算技術の実装を目指す。将来、今回の技術が確立された際には、「異なる企業が互いのデータを秘匿化したまま共有できる」だけでなく、「高い予測精度を保ったAIの実現」が可能となり、研究開発の飛躍的な加速と効率化を通じ、個社の取り組みを超えた新たな価値の創造が期待される。
今回の検証において、以下の2つの成果を得た。1つ目は、異なる企業間のデータ連携と AIモデル活用による可視化。今回、同社とZeon Chemicals(ZCLP社)間の合成ゴムに関する実験データを繋げることに成功した。ZCLP社は、合成ゴムをはじめとするエラストマー製品の製造・開発を手掛ける同社のグループ企業だが、データ管理は同社から完全に独立しており、今回の実験データ連携は仮想的な企業間データ連携事例と捉えることが出来る。
例えば、配合物の種類や記名ルールが異なっている状況でも、独自の変換プログラムを適用し、データ連携を実現させることに成功した。同社データベースに無いZCLP独自の配合剤は、含まれる成分や基本的な物性値など科学的データを調査し紐づけることで連携後のデータベースの質向上を実現し、結果的に7000水準以上の配合データベースが出来上がった。
2つ目は、データ連携によるAIモデルの予測性能の向上。上記で連携した両社データを基に訓練されたAIモデルを用いて、ゴム物性値(Hardness)に対する予測値を実測値と比較した結果、各社単体のデータに比べ、連携されたデータの精度の方が向上していることが確認できた。
今後は、企業間データ連携において最大の障壁となる秘匿性を担保する秘密計算技術について、SBテクノロジーと連携し、本格検証を進める。具体的には、秘密計算技術のひとつであるTEEを介したデータ連携、AI解析システムを実際に構築し、今回の成果を再現することでその実現性を検証する。
2024年12月04日