旭化成は12月5日、高純度エチレンカーボネート(EC)および高純度ジメチルカーボネート(DMC)を技術ライセンスしたJiangsu Sailboat Petrochemical(本社:中華人民共和国・江蘇省連雲港市、以下「Sailboat」)の新プラントが、2024年11月に中華人民共和国・江蘇省連雲港市で商業運転を開始したことを発表した。
これらの高純度カーボネートは、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池(LIB)の電解液溶剤に用いられており、このたびの二酸化炭素(CO2)を主原料とする大型高純度カーボネート類生産技術の確立とその工場の稼働は、CO2を化学製品の原料として消費する機会を大きく広げることができる。
昨今、LIBは自動車産業のEVへの世界的なシフトや電力貯蔵システム(ESS)の増加が見込まれており、さらなる需要拡大が予想されている。また地球温暖化対策の観点から、LIBの主要構成要素にもCFPが低い環境に配慮した設計が求められている。
本ライセンス技術は、原料の約50%がCO2であり、年間数万トンのCO2を消費・吸収する技術として世界中から注目されている。
同社とSailboatは、年間10・8万トンの高純度ECおよび高純度DMC製造技術のライセンス契約を2021年9月に締結し、共同でプラントの設計・建設、試運転を進め、2024年11月にライセンス契約における検収運転を終了し、商業運転を開始した。このプラントは年間5・4万トンのCO2を原料として消費する。
Sailboatカーボネート(EC・DMC)プロジェクト総責任者の許加楽氏は、「Sailboatは、LIB用電解液溶剤の高純度ECおよび高純度DMC生産によって、LIBの新材料産業チェーンを更に拡大し、持続可能な社会に貢献していきます」とコメントしている。
同社常務執行役員兼環境ソリューション事業本部長の松山博圭氏は、「旭化成は、2020年よりLIB用電解液溶剤として使用される高純度ECおよび高純度DMCを、CO2を原料として生産する技術をライセンスしています。今後もCO2ケミストリーの実用化に注力し、世界の環境課題に対するソリューションを提供することで持続可能な社会に貢献していきます」とコメントしている。
今回のカーボネート類電解液原料生産技術のライセンス実績と、2004年から行っているCO2を原料とするポリカーボネート生産技術のライセンス実績を合わせると、同社の技術によって毎年30万トンのCO2を原料として消費しており、CO2排出量の削減に貢献している。同社は、今後もCO2排出量の削減に大きく寄与する技術を世界に広めていくことで、持続可能な社会への転換に貢献していく。