年頭所感 日本ゴムホース工業会 森重道会長

2025年01月02日

ゴムタイムス社

 令和7年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
 昨年を振り返りますと、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東地域の紛争など、国際情勢が一段と不安定になっており、不確実性が高まっているものと思います。また米国のトランプ次期大統領が掲げている追加関税や移民規制の強化など米国保護主義色が強まることによる世界経済の不透明感、地政学リスクを背景とした資源価格高騰などの懸念材料があり、更に中国経済の減速が中国向け輸出の悪化を通じて世界経済の下押し圧力となっており経済環境は依然厳しいものがあると思います。
 日本経済は内需主導の緩やかな回復に転じています。昨年12月9日に発表されました7~9月期GDP成長率は、前期比0・3%(年率1・2%)と2四半期連続のプラスとなりました。海外経済減速や物価高が重しとなっていますが、生産が持ち直した自動車販売の回復等、個人消費の伸びが全体を押し上げています。一方で、人手不足による供給制約や台風等を受けて設備投資が弱含みとなっています。しかしながら、先行きは、雇用・所得環境の改善に伴う民間消費の拡大や旺盛なインバウンド需要などにより、更なる持ち直しを期待するところです。
 このような情勢下、ゴムホース業界は、実体経済の動向を見据えながら、市場の変化と需要動向へ機敏に対応しつつ、継続的な変革に挑戦し続ける企業経営が肝要であると考えております。

 昨年のゴムホースの新ゴム生産量は、まだ12月の集計が終わっていませんが、高圧用、自動車用、その他用ホース、全品種で前年実績を下回る見込みです。ゴムホース全体の年間生産量は、前年比6・7%減の3万1631トン、出荷金額は前年比5・7%減の1342億円といずれも前年を下回る見通しです。
 次に、昨年の輸出入の状況ですが、輸出は全体の約35%を占めるアジア向けが前年比約4・3%増、北米向けは約24%増の見込みで、円安も寄与し年間の総輸出額は、前年比約10%増の591億円を見込んでいます。輸入につきましては、アジア地域が中国の不振を受け横ばいとなるものの、主力の自動車用ホースを始め、北米・欧州地域で前年を上回り、年間の総輸入額は前年比約4%増の255億円の見通しです。

 本年のゴムホースの新ゴム生産予測量は、前年比1・7%増となる3万2160トン、出荷金額は前年比1・8%増の1366億円になるものと予測しています。
 品種別には、生産構成比約70%を占める自動車用ホースは、認証不正問題による影響が解消に向かい、第1四半期(1~3月)は前年の反動で増加するものの、4月以降は横ばいで推移すると推定し、年間生産量は前年比2・4%増と予測しています。
 構成比約14%の高圧用ホースに関しましては、主な需要先の土木建設機械が上期には底を打ち、以降、国内は横ばい、輸出は緩やかに回復と予測、また工作機械は北米需要減の影響はあるものの、新エネルギ-・半導体に関連した需要が中国等で戻りつつあると推定し、年間生産量はほぼ横ばいと予測しています。
 構成比約16%のその他用ホースは、一般汎用ホース(空気、酸素、アセチレン等)、耐油・耐摩耗・ケミカルホースの一般産業分野での需要が安定基調で推移すると見ており、年間生産量は前年比ほぼ横ばいと予測しています。
 本年のゴムホースの生産量は、昨年をわずかに上回るレベルで推移するものと予測しています。
 次に本年の輸出入について申し上げますと、輸出が615億円で約4%増、輸入が257億円と前年並みを予測しています。

 このような業界動向の中で、当工業会は、国際化の進展に伴い、平成12年にISO機関のホース部門(TC45/SC1)で正式メンバー(Pメンバー)となり、日本の実状や考え方をISOに反映させるよう積極的な働きかけを実施して参りました。
 昨年は、日本・奈良市で開催されました、ISO/TC45国際会議に技術委員が参画し、プロジェクトリーダーとして積極的な提案を行うことで成果を上げました。本年もインドで開催予定の国際会議に参画し、Pメンバーとしての更なる活動を推進して参る所存であります。

 何かと不透明感が払拭されない、変化の激しい環境下ではございますが、当工業会と致しましては、様々な産業分野における重要な機能部品であるゴムホースを供給することを通じて社会的責任を果たすとともに、社会に貢献する価値の創造を積極的に努めて参る所存でございます。

森重道会長

森重道会長

 

関連キーワード: ·

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー