年頭所感 日本ベルト工業会 又場敬司理事長

2025年01月02日

ゴムタイムス社

 昨年の日本経済全体は堅調な企業業績を背景に緩やかな回復に向かいました。サプライチェーン強化・デジタル化・人手不足対応の設備投資、インバウンド需要により内需の回復が進みました。輸出は海外景気が徐々に復調し、円安効果もあり自動車以外の産業も次第に回復してまいりました。
 今年の日本経済も景気回復が継続していくと思われます。ただし、国内では人手不足による供給制約、米国のトランプ大統領の第2次政権による通商政策の行方、特に米中の貿易摩擦が再熱する懸念、中国の内需不振と輸出拡大による貿易摩擦の懸念、地政学リスクの高まりなど景気に対する不安定要素が多く、これらが国内景気の下振れ方向に向かう懸念が高まっています。

 コンベヤベルトの令和6年度の生産量は7138トンで前年比79%の見込みです。その内訳は、内需が5145トンで同92%、輸出が1993トンで同57%です。内需は、主力需要先の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量が中国の過剰生産による輸出増で回復せず、前年比100%を確保できませんでした。輸出は鉱山需要が前年の特需の反動で大幅に落ち込みました。
 令和7年度の需要予測は6897トンで前年見込比97%としました。その内訳は内需が5624トンで同109%、輸出は1273トンで同64%の見込みです。内需は鉄鋼産業他主力需要先が回復し前年比100%超の見込みです。輸出は海外景気の低迷を受けて鉱山需要が落ち込む見通しです。

 伝動ベルトの令和6年度の生産量は10512トンで前年比102%の見込みです。その内訳は、内需が8407トンで同97%、輸出が2105トンで同123%です。内需は主力需要先である工作機械産業が回復しましたが、自動車産業の認証問題による減産の影響を受けました。輸出は円安もあり好調でした。
 令和7年度の需要予測は10505トンで前年見込比100%としました。
 その内訳は、内需が8401トンで同100%、輸出が2104トンで同100%です。内需、輸出共に主力需要先である自動車産業、工作機械産業の需要を今年度並みと見込んでおります。

 樹脂ベルトの令和6年度生産量は約101万㎡で前年比101%の見込みです。
 その内訳は、内需が約93万㎡で同99%、輸出が約8万㎡で同123%です。2大需要先である食品分野、物流分野を中心に取替需要が堅調でした。物流分野は大型物流倉庫新設は以前の活況な時期と比べると落ち着きましたが、取替需要が発生しました。
 令和7年度の需要予測は、約105万㎡で前年見込比104%と100万㎡の大台は確保できる見通しです。その内訳は内需が約97万㎡で同104%、輸出が約8万㎡で同101%です。インバウンド需要、外食産業の回復による食品分野と物流センターの取替需要による物流分野を取り込んでいきます。

 これまでと比べて、海外要因を中心に景気の先行き不透明感が増しており、これらのマイナスの側面が強まれば、景気の持ち直しの勢いが弱まり失速に至るリスクが出てきます。
 このような状況下、当日本ベルト工業会は、経済政策や需要先動向等を的確に把握しタイムリーなデータサービスを行う一方、ISO TC41のメンバーとして日本の考え方をISOに反映させ日本規格の国際化を推進するなど、尚一層のベルト業界発展のため貢献してまいります。

又場敬司理事長

又場敬司理事長

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