日本電気 (NEC)、産業技術総合研究所(産総研)、三井化学、オメガシミュレーションは12月19日、化学プラントなどの大規模インフラの運転を支援する「プラント運転支援AI」とシミュレータ上に再現したミラープラントを組み合わせたプラント運転支援システムを構築し、三井化学大阪工場の大規模ボイラープラントにおけるスタートアップ操作の支援に成功したと発表した。
これにより、ボイラープラントや化学プラントのスタートアップ操作や生産量変更操作など、これまで自動化が難しかった非定常状態の運転支援や、冷温停止状態から定常運転に到達するまでの時間短縮による原料やエネルギーの削減など、運転の効率化が期待される。
NECと産総研は、このたび新たに高速かつ高精度に制御量を計算する技術「レプリカモデル予測制御」を開発し、これらを組み合わせた制御システムの利用可能性について三井化学大阪工場の大規模ボイラープラントで検証し、同技術を利用して安全かつ効率的にスタートアップできることを確認した。
技術の特長は3点。1つ目は、化学プラントの非定常状態の運転コストの削減。同技術により、スタートアップ操作や生産量変更操作など、これまで自動制御および運転支援が困難であった非定常状態の運転において、無駄なく効率的な運転操作が可能になる。
2つ目は、安全な操作が事前に確認できるという点。同技術では、オメガシミュレーションのダイナミックシミュレータを活用し、強化学習を通じて自動で大量の試行錯誤を繰り返しながら運転方法をAIが学習する。強化学習と精密なシミュレーションの組み合わせにより、さまざまな状況に対応できるようになる。運転中は、ミラープラント(オンラインダイナミックシミュレータ)と学習済みのAIがオンラインで連携し、将来の操作内容と運転予測がリアルタイムに更新され、その予測を見ることで安全な操作かどうかの確認ができる。
3つ目は、予期せぬ変動に迅速に対応できるという点。プラントの運転では豪雨や原料変動などによる予期せぬ変動が生じることもあり、これらへの迅速な対応も求められる。同技術ではさらに、シミュレーションデータとニューラルネットワークを用いてプラントの挙動をレプリカモデルとして再現し、そのレプリカモデルを用いたモデル予測制御を備えることで、予期せぬ変動に迅速に対応する。
4者は今回の実証実験で得られた成果をさらに発展させ、AIとシミュレータを用いた運転支援技術を提供することで、化学プラントの運用効率化に貢献していく。
2024年12月20日