年頭所感 日本プラスチック工業連盟 淡輪敏会長

2025年01月02日

ゴムタイムス社

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 2024年は元旦に発生した能登半島地震にはじまり、台風や大雨など、多くの自然災害に見舞われた1年でした。被災された皆様に、深い哀悼の意を表します。

 世界では地政学的リスクが高まり続けており、アメリカ合衆国ではトランプ大統領の再選により様々な影響が予想され、気候変動における影響も懸念されています。しかし、気候変動に関しては、短期的には多少の影響があるかもしれませんが、長期的には大きな流れは変わらないと思われます。

 我が国の化学業界においては需要低迷が続いていますが、産官学が協力して持続可能な社会の実現に向けた取り組みが進んでおり、2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、GX推進の政策と新技術の実証が進行中です。
 さらに、プラスチック業界では、プラスチック資源循環戦略(2019年策定)、プラスチック資源循環促進法(2022年施行)、再資源化事業等高度化法(2024年5月公布)など、3Rから循環経済(CE)への転換が進みつつあります。また、2022年のUNEA(国連環境総会)決議に基づき、プラスチック汚染条約の協議も佳境に入っており、大きな転換期を迎えています。

 当連盟では、2019年に日本政府に先立ってプラスチック資源循環戦略を策定し、これまで様々な検討を行うと共に、業界代表として関係省庁へ意見を具申して参りました。今年は次期4ヵ年計画を策定予定で、これまでの検討成果や環境変化も踏まえつつ、プラスチック資源循環型社会の形成へ向けた各種活動を推進していきます。

 昨年6月に4年ぶりに一般消費者を対象としたプラスチックに対するイメージ調査を当連盟で実施しました。前回2020年の調査では大幅に悪化しましたが、今回は総じて回復傾向にありました。プラスチックの有用性については極めて高い評価が継続しており、安全・環境関連や循環型社会形成への貢献についても、前回調査に比べて良化しましたが、不十分なレベルに留まっており、消費者の皆様の理解度不足に因ると推察される調査結果も多いのが実状です。

 また昨年は、5年ぶりにプラスチック教育連絡会(関係諸団体と連携)として東京都中学校の理科の先生方を対象とした工場見学会を再開し、全国中学校理科教育研究会等でのプラスチック関連教育補助資料集の無償配布、当連盟と消費者団体との懇談会の継続開催など、広報・啓発活動に努めました。今年も消費者の皆様へプラスチックに関する正しい情報をお伝えすべく、より一層、注力して参ります。

 規格関連については、「プラスチック」(TC61)及び「流体輸送用プラスチック管、継手及びバルブ」(TC138)のISO国際会議が、各々米国及びフランスで開催され、日本からも多くの関係者が参加し、日本のプレゼンスを示しつつ規格開発を進めることが出来ました。今年もISO国際会議に委員を派遣し、具体的な規格の提案を着実に進めていきます。

 これまで我が国では、関係者の多大なる尽力の下、飲料用PETボトルのリサイクルを筆頭に、世界でも先進的な3Rの取組みがなされて来ました。しかしながら資源循環型社会の形成に向けた取組みは緒についたばかりで、多くの課題が山積しています。
 当連盟は、各省庁、アカデミア、関係諸団体などと密に連携しつつ、各種課題解決に努めて参る所存ですので、本年もご支援、ご協力をよろしくお願いたします。

 最後に、皆様のますますのご繁栄とご健勝を心よりお祈り申し上げます。

淡輪敏会長

淡輪敏会長

 

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