中期経営計画「ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーロク」では、「YX2023」から推進してきた既存事業における強みの「深化」と新しい価値の「探索」をさらに推し進め、次世代に負の遺産を残さないよう変革の「総仕上げ」をやり切り、「成長戦略」によって企業価値向上の実現を目指しています。
第3四半期累計では、新車用タイヤ販売は中国での日系自動車メーカーの販売不振が継続したものの、特に日本での納入車種が増加したほか、市販用タイヤでは欧州・アジアで販売が好調で、いずれも前年同期を上回りました。
OHT事業では、農作物価格の低迷などの影響から農機メーカーでの生産縮小を受け、新車用は大きく落ち込みました。一方、市販用では「YX2026」におけるマルチブランド戦略の展開が功を奏し、前年同期比で大きく伸長しました。
MB事業では、ホース配管は油圧、自動車向けいずれも需要が落ち込み苦戦しましたが、工業資材では、防舷材などの海洋商品や航空部品の販売は好調でした。
事業利益は販売量の増加、販売価格やMIXの改善に加え、YーTWSの通期寄与、円安も寄与し、前年同期に対し増益となり、売上収益・事業利益・事業利益率は過去最高となりました。引き続き通期での過去最高達成に向け、事業活動を進めていきたいと考えております。
メキシコの乗用車用タイヤ新工場建設では今後予想されるタイヤ需要の増大に迅速に対応するため、北米市場での地産地消の能力増強を目的に生産能力500万本の工場建設を3月に発表させて頂き、2027年第1四半期からの生産開始に向けて建設・準備を順調に進めております。
7月に発表した中国の乗用車用タイヤ新工場建設については、中国現地政府の都市再開発を目的とした移転要請に応じたもので、現在の杭州市にある工場を同じ市内の別エリアへ移転し、生産能力900万本でスタートする予定です。同時にこの新工場は「YX2026」の成長戦略に掲げた『1年工場』の第一弾となる工場で、新工場立ち上げにおいては横浜ゴムが今まで培ってきたノウハウだけでなく、現地で実績のある協力企業のノウハウも取り入れることで低コスト・高効率生産を実現し、市場競争力の高い工場を1年で立ち上げることに挑戦するものです。そのスタートとなる工場の起工式を先日の16日に執り行い、中国の新工場についても順調に進めております。
プレミアムカーへの新車装着について「ADVAN」ではメルセデスAMG社の「CLE53」やBMW社の「X7」「XM」「M2」など欧州プレミアムカーへの納入を開始しました。「GEOLANDAR」では、LEXUSの「GX550」、トヨタ自動車の「ランドクルーザー250」への納入を開始しました。さらに、「ADVAN WINTER V907」がメルセデスAMG社より「E53」向けに技術承認を獲得いたしました。日本のみならず、欧州においてもWINTERタイヤの拡販に取り組んでまいります。
市販用タイヤについてはオフロード感を高めたSUV・ピックアップトラック向けに「GEOLANDAR A/T4」を発売し商品の拡充を進めました。
モータースポーツ活動では「ADVAN」装着車が「SUPER GT」のGT300クラスでのシリーズチャンピオンを獲得しました。「GEOLANDAR」も米国のオフロードレース「King of the Hammers」の3クラスで優勝するなど、「ADVAN」「GEOLANDAR」の優れた走行性能を日本、海外のレースで示すことができました。
本年7月に米国に本社を置くGood yearのOTR事業の買収を発表しました。「YX2026」における「Hockey Stick Growth」を果たすため、OTRタイヤにおいても事業強化を図りました。大小合わせたM&Aを戦略的に行う「Programmatic M&A」の推進を「YX2026」発表時でもご説明しておりましたが、今回の買収はこの戦略に沿ったものです。買収完了は2025年上半期を予定しております。また、すでに当社が高いシェアを保有している農業・林業用車両向けタイヤ、また産業・港湾車両用タイヤにおいて、マルチブランド戦略とサービス強化により、更なる市場地位強化を目指し、OHT事業の更なる市場地位・競争力強化を図ってまいります。
自動運転トラックの開発などを行う『T2』が実施するレベル4自動運転トラックによる幹線輸送の公道実証実験に参画し、自動運転トラック向けタイヤに求められる性能などの検証を開始いたしました。
「YX2026」では最大の課題として位置付けたタイヤ開発のスピードアップ、抜本的なコストダウンに取り組んでおります。
従来の当社の新商品開発ではひとつの商品開発に対し、ひとつのプロジェクトを立上げ、その開発に3~4年の時間を費やしてきました。今後は複数の商品開発を大きなひとつのプロジェクトと位置付け、ベースとなる商品開発と同時に2つ目、3つ目の商品開発の土台となるプラットフォームの開発を行うことで、共通パーツの使用拡大によるコストダウン、大幅な開発時間の短縮を進めていきます。また、当社独自のAIフレームワーク「ハイコラボ」の活用領域を構造設計まで広げ、バーチャル・シミレーション開発と併用することで、開発業務の効率化を促進する取り組みを進めます。
「材料費」「加工費」の2つのアプローチでコストダウンを行っていきます。「材料費」はYOHT、YーTWSに加え、今後はGoodyearのOTR事業も当社グループの一員になることで、更なるスケールメリットが期待でき、これを確実に刈り取っていきます。競争力のある新規サプライヤーの採用、当社の世界の各工場への横展開により、スピーディーなコストダウンを図ってまいります。「加工費」についても各生産工程・設備ごとの生産計画の最適化を行い、計画している設備投資を含めた既存設備の能力・稼働率の最大化を図っていきます。また、当社の世界各地の工場コストを横並びで評価し、インド・中国など競争力の高い工場のやり方を検証し横展開を実施してまいります。
昨年「100日プラン」の名の下に実行した意思決定の迅速化など、事業基盤の改善を引き続き進めました。海洋事業においては新たにハイエンドのソリッド型防舷材を上市し、総合的な製品ポートフォリオを構築しました。一方、コンベヤベルト事業では販売をより強化し、本年本格稼働した平塚での増産投資の効果刈り取りを進め、収益を伴った成長を目指します。また、昨日リリースいたしましたが、コンベヤベルトの安全性や経済性に貢献するセンシング技術を確立し、最適な運用管理を提案するソリューションサービス構築を加速させております。
温室効果ガス排出量の削減については、YーTWSを含め、2019年比で「2026年に30%」、「2030年に40%」を新たな目標とし、「2050年のCO2排出量ネットゼロ」達成に向け継続して取り組みます。
本年7月には持続可能な天然ゴムの調達活動の情報共有を目的としたイベントを「天然ゴムサプライヤーズデー」と称して開催し、サプライヤーの皆様とのパートナーシップの強化を図りました。
社会開発の分野における外部評価では、LGBTQ+など性的マイノリティに関する企業・団体の取り組みを評価する「PRIDE指標2024」で最高評価を受賞、直近でもダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを評価する「D&I AWARD 2024」で最高評価の「ベストワークプレイス」に認定されました。引き続き「YX2026」の達成と企業価値向上へ向けて全社での取り組みを進めてまいります。
今回で3回目の発行となった統合報告書は、機関投資家のご意見も踏まえ、各事業の成長戦略とサステナビリティの取り組みを強化していることがわかるよう内容の拡充に努めました。
政策保有株式の売却を積極的に実行してまいりましたが、本年度は売却収入700億円を達成するなど、資本効率の向上に取り組んでおります。
こうした活動を踏まえ、2024年度通期業績見通しは8月に公表値を上方修正いたしました。売上収益1兆1050億円、事業利益1285億円、営業利益1160億円、当期利益785億円を予定しております。最後まで気を引き締めて、公表値達成に向け全社一丸となり取り組んでまいります。
昨今の世界情勢は「米国含めた各国での政権交代」、「中国経済の内需低迷」、「中東・ウクライナ情勢」など、引き続き不確実な要素が多く不安定な経営環境になるとみております。
自動車産業全体としては、引き続き電動化がひとつのトレンドであることは確実だと考えられているものの、世界的にみると中国ではEVは今も伸びつつも、日米欧ではその成長が鈍化・横ばいの様相となってきております。こうした地域別の状況に合わせた商品をいち早く準備させることが重要になってくると考えております。
タイヤ事業としては、そうした地域単位でのトレンドをしっかり意識したマーケティングと、ここ数年来強化してきた販売力により、高付加価値品比率最大化を目指しブランド価値向上と拡販を進めます。また、OHT事業においてもアフターマーケットでの更なる拡販を進めてまいります。MB事業は引き続き構造改革を強力に推し進め、収益率の向上を図ってまいります。
サステナビリティ経営では計画の策定に合わせて、当社グループを取り巻く事業環境や社会課題の変化を踏まえてマテリアリティの見直しを実施しました。事業活動が社会や環境へ与える影響と社会や環境が事業活動にもたらす影響の双方を考慮して各分野でのマテリアリティを特定し、持続可能な企業価値向上につなげてまいります。
最後に、今年も残すところ2週間となりました。来年の皆様のご健勝とご清栄を祈念するとともに、変わらぬご指導、ご鞭撻を頂きますよう、どうかよろしくお願いいたします。