年頭所感 石油化学工業協会 工藤幸四郎会長

2025年01月03日

ゴムタイムス社

 2025年の新年を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げますとともに、年頭のご挨拶を申し上げます。
 昨年を振り返りますと、長引くロシアによる軍事侵攻や中東情勢の緊迫化等、先行き不透明な状況が続く中で、世界の景気は持ち直しの動きがみられました。日本経済では、賃上げや雇用環境の改善、各種政策などの効果もあって、一部に足踏みが残りっておりますが、消費の緩やかな回復が期待されています。
 一方で我々、石油化学産業におきましては、昨年はエチレンに代表される化学製品の需要低迷が継続しており、一昨年に続いて厳しい年となりました。国内の石油化学製品の需要減少や中国市場の低迷、および中国を中心としたプラント新増設による供給過多が苦境の主な要因となっています。

 このような状況において、日本の石油化学産業はわが国製造業のサプライチェーンのスタートに位置する基盤産業として、製品の安定供給責任を果たすとともに、循環型経済構築や、カーボンニュートラルといったサステナブル社会の実現に向けて「化学の力」で貢献し、わが国経済、社会を支えるという使命を果たしていくことがこれまで以上に重要となっています。
 石油化学業界としては、これまでにも設備適正化による構造改革や、新分野への研究開発等の強化は勿論のこと、保安力の向上、安定操業の継続による事業基盤の強化を喫緊の課題と認識し、各社経営トップの強い関心のもと、安全・防災意識の向上、自然災害による事故の防止等への対応を行ってまいります。
 加えまして、国を挙げての課題であるDXやGXなどへの投資推進を通じた企業のイノベーション実現が求められる中で、革新的なプロセス開発や、化石原燃料からの転換等の取り組みが進展するとともに、コンビナート内やコンビナート間での連携がはかられますことが業界としても期待されております。

 当協会としましては、引き続き石油化学産業の持続的発展に向けて、以下の諸課題に積極的に取り組む所存です。

1.『保安・安全の確保・向上』
 石油化学産業にとりまして、最重要の課題は「保安・安全」の確保です。「保安・安全」の確保、向上のためには、「安定操業」を継続していくための技術伝承が不可欠です。熟練技術者や運転員の減少によって技術力や現場力が低下することは決して許されません。そのため、コンビナート地区での「事故事例巡回セミナー」や製品プロセス毎の「保安研究会」で、各社の事故情報や取り組み事例を共有するとともに、「保安推進会議」の機会を活用して業界内外のDXを取り入れたスマート保安の優良事例などを共有することで、水平展開を積極的に進めます。また「産業安全塾」では、サイバーセキュリティといった新たな課題にも対応しつつ、保安・安全の経営・管理者層の育成に努め、企業の垣根を超えた保安・安全の底上げを図ってまいります。

2.『事業環境の整備』
 事業環境の整備では、メンテナンス要員がボトルネックとなる定期修理の実施時期を計画的に分散することや、人員不足に対応した効率的な取組みの展開などを通じて安定的な生産量の確保に努めます。また慢性的に不足している機電系人材の採用支援を強化します。規制改革では「内閣府規制改革ホットライン」を通じて、円滑な事業活動に寄与する各種規制の適正化に取り組みます。税制面では、経産省、及び関係諸団体と連携しながら国際的イコールフッティングの実現、競争力強化等の基盤整備に努めます。

3.『グローバルな課題への対応』
 石油化学業界では、今後も「カーボンニュ-トラル実現」や「廃プラスチック問題」への対応による「循環型社会の構築」を通じて「持続可能な社会実現」に向けた貢献が一層必要となっております。プラスチック資源循環技術などで「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」などの更なる技術革新に取り組み、また企業や業界の枠を超えたGXの社会実装化に挑戦していくことが一層強く求められます。
 またAPIC(アジア石油化学工業会議)では、本年5月のバンコク大会開催が予定されています。韓国との二国間会議も含めて石油化学産業を取り巻く様々な課題について積極的な意見交換に努めてまいります。

 最後に各界関係者の皆様には今後とも当協会への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。そして本年が、石油化学業界にとって、また皆様にとって実りある躍進の年となるよう心より祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

工藤幸四郎会長

工藤幸四郎会長

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