昨年は、ウクライナ・ロシア戦争の長期化、中東情勢の緊迫化、更には中国不動産バブルの崩壊等、益々世界の混迷が深まり、全く先の読めない時代に突入したと実感しました。本年2025年は、米国では1月20日からトランプ新政権がスタートし、中国・ロシア・中東でもナショナリズムがより強まるなど、自国第一主義が台頭する結果、各国が共存共栄し発展していくという民主主義の根幹のシナリオが崩れていく可能性が高いと思われます。地政学リスクはさらに拍車が掛かり、想定外の環境変化が起きてくる年になることが予想されます。
そのような中、当社グループはこうした不確実性を乗り越え、一定の業績を確保することができました。デジタルAI活用やセンシング技術等による、新たなサービスビジネスの創出と新事業領域の開拓も進んでおり、企業の設備点検業務をデジタル化した「MONiPLAT」は2023年4月の発売からわずか1年足らずで導入企業数1000社を突破しました。また、高機能樹脂製品工場の国内操業開始やベトナム新拠点の早期稼働など、当社グループは更なる成長路線を実現していくためのサプライチェーン整備を進めており、創業100周年に向け着実に土台を固めつつあります。
さらに、昨年より本格的に導入・推進している「ウェルビーイング経営」については、昨年6月から新たにCWO(Chief Wellーbeing Officer)を社長COOが兼務し、当社グループに新たな息吹をもたらすことを期待しております。「ウェルビーイング経営」のスローガンは「やらされ感よりワクドキ感」、明るく前向きにワクドキ感を持って、真の遣り甲斐を感じながら仕事に取り組むことで、我々のエネルギーが周囲にも伝播し、顧客、株主、地域社会など、あらゆるステークホルダーのウェルビーイングを作り出せると考えます。
昨年5月には初の「バルカー技能グランプリ」を開催しました。社員のウェルビーイングおよび技能の向上と各生産会社との連携強化を目的に、台湾において当社グループ6ヶ国の生産会社から選抜された優秀な技能者29名が参加し、技能の世界一を決定する競技が実施されました。この取り組みは、当社の97年にわたる歴史の中で初めての試みであり、今後も毎年各国で開催していく予定です。
一方で、昨年は当社100年近い歴史の中でも類を見ない不祥事が発生しました。経営として大変悔しく思うと共に、人的管理が行き届かず申し訳なく思っています。この事件は、信頼関係や組織文化の在り方を見直す必要性を浮き彫りにしました。今後は、内部統制体制を全面的に見直すとともに、この様な事件が起こらない、起こさない会社に生まれ変わることを誓います。
会社が大きく成長し領域を広げていけばいくほど、経営は現場を信頼して任せるしか手立てが無くなります。社員それぞれが「正しく考えて行動できる」「正しく変化対応が自らできる」集団を目指す年にすべく、THE VALQUA WAYの理念浸透をさらに進め、「したたかな真のコミュニケーション」による確固たる相互理解と信頼関係構築を進めて行きます。これからの経営は、こうした信頼関係抜きには語れず、社員を幸せにしていく「ウェルビーイング経営」を実践していく事が経営の使命だと強く思っております。そのカギは経営と現場の「任せ、任される」相互信頼であり、その信頼を繋ぐ理念がTHE VALQUA WAYだと信じています。本年を「THE VALQUA WAYのもと、正しく判断、正しく行動」、することを定着させる年にするため、今後も私は当社グループの経営理念であるTHE VALQUA WAYの本質を語り続けます。
創業100周年まで残り3年となりました。本年度も、当社グループの原点であります「パイオニア精神」を見失うことなく、常に新しいことに挑戦し、未来を切り拓く先駆者となり、共に明るく元気よくスタートすることを今一度皆さんと共有し、私の年頭の訓示といたします。