年頭所感 東レ 大矢光雄社長

2025年01月07日

ゴムタイムス社

 <経営環境>
 世界経済は、米国は引き続き堅調に推移すると見込まれるが、トランプ政権による政策転換が米国内外に大きな影響を与えることが予想される。中国は不動産市場の調整により短期的な回復は期待できず、ロシアとウクライナ、イスラエルと中東諸国の地域紛争も終結の見通しが立っていない。
 また、地球環境問題への対応として、温室効果ガスの削減やエネルギー転換など、企業は環境リスクを管理し、持続可能な成長を目指すことが、これまで以上に重要となっている。
 当社を取り巻く事業環境は一層不確実性が増しており、今まで以上に「スピード感」を持って変化に対応していく必要がある。そのためには、市場との対話を強化して、変化の本質を見極め、適切な軌道修正を行いながら事業運営に取り組むことが重要だと考えている。

 <2025年の経営方針>
 まず、経営の最重要課題である、安全・防災・環境保全を徹底する。ゼロ災達成に向け、継続して全社の安全活動に徹底して取り組む必要がある。
 倫理・コンプライアンスについては、社員一人ひとりが高い倫理観と強い責任感を持ち、ステークホルダーに対して真摯に行動することはもちろん、思ったことを口に出せる心理的安全性が担保された職場環境や話し合いができる文化を築くことが、結果的には個人や組織の不祥事を防ぐだけでなく、互いを尊重し高め合うことにもつながる。倫理・コンプライアンス活動を組織の活性化や互いの考えを深め合う前向きなコミュニケーションの機会として活用していく。

 <中期経営課題「APーG 2025」の完遂>
 2025年はAPーG 2025の最終年度として目標達成に邁進するとともに、次期中期経営課題を策定し、東レグループの今後の成長を方向付ける非常に重要な年となる。APーG 2025で掲げた財務KPIを達成し、「持続的かつ健全な成長」を実現するため、各課題に取り組む。
 APーG 2025では「収益力の向上」と「資産効率の改善」を課題とし、「5つの基本戦略」と財務健全性の維持を掲げており、この実効性を高めるために、「7つの経営重点施策」を設定し、推進している。特に、収益力の向上のために、全社で戦略的プライシングを推進している。
 単なる値上げではなく、研究・技術が開発し、工場で生産された当社の製品の価値をお客様に認めていただく活動であり、営業のみならず、生産・技術・研究が一体となって取り組むことが重要な、高付加価値化推進のための意識改革でもある。
 お客様に価値ある製品と認められない場合は、営業は生産・技術・研究とその事実を共有し、差別化できる高付加価値品の開発を急ぐ、抜本的に生産性を改善する、あるいはサプライチェーンやターゲット市場を変えていくなど、「イノベーション創出」「トータルコストダウン」にもつなげていかなければならない。各事業に携わる関係者全員が、組織の壁を乗り越えて一丸となって推進していく。

 社長就任以来、私は社員をはじめ国内外のさまざまなステークホルダーとの対話に積極的に取り組んでいる。あらためて「対話」の重要性を痛感しており、これからも大切にしていく。そして、東レグループが目指すべき未来を共有するとともに、「真のサステナブルな会社」の実現に向けて、東レグループの社員が情熱を持って働き、誇りを持って仕事に取り組めるような、自由闊達な企業文化を社員と一緒に築き上げていきたい。

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