三洋化成工業がUV硬化樹脂開発 ナノインプリント用素材を

2025年01月17日

ゴムタイムス社

 三洋化成工業は1月16日、次世代AR(拡張現実)/VR(仮想現実)光学デバイスの進化を支える新しいナノインプリント用UV硬化樹脂『ハイルシス』を開発したことを発表した。本開発品は、可視光領域での高い透明性とナノインプリント適性を兼ね備えつつ、非常に優れた耐光性と高屈折率(屈折率nd=1・9)を両立した樹脂。
 この両立は、特殊な無機フィラーと、長年培ったディスプレイ用UV硬化樹脂の設計技術の融合により実現した。『HILUCIS』は、光学デバイスの設計自由度を高め、視野角の拡大、光制御性能の最適化、ならびに光学デバイスの信頼性向上に貢献する。

 ナノインプリント技術は、ナノスケールの微細パターンを樹脂に転写する加工法で、フラットパネルディスプレイやスマートフォンのカメラ、AR/VR用グラス、顔認証や自動運転用のセンサーなど、さまざまな光学デバイスに広く活用されている。これらの光学デバイスには光の伝播、集光、分散、回折を担う導波路や回折格子などの光学部品が用いられる。
 これらの光学部品にはガラスや樹脂が用いられており、特に、高屈折率のナノインプリントUV硬化樹脂は、設計の自由度、生産性の高さを生かしつつ、視野角の拡大や光制御性能の向上に寄与するとして注目されている。高屈折率樹脂で使用される代表的なフィラーとしては酸化チタンや酸化ジルコニウムがあるが、酸化チタンは光学活性が高く、紫外線による光触媒作用で樹脂の劣化を引き起こす可能性がある。一方、酸化ジルコニウムは酸化チタンと比べて屈折率が低いため、屈折率が1・8以上の樹脂では耐光性との両立が課題だった。

 同社は近紫外から可視光領域での黄変を抑制するために、光学活性が低い特殊な無機フィラーを採用。さらに、これまでディスプレイ用UV硬化樹脂設計で培った知見により、本フィラーとの相性を考慮し樹脂マトリックスを最適化した。その結果、高い透明性と優れたナノインプリント適性を維持しつつ、耐光性と屈折率を高いレベルで両立することに成功した。

 AR/VRのリアルで没入感のある表示、装着時の快適性向上や自動運転センサーの高感度化など、光学デバイスにはさらなる性能向上や信頼性向上が求められている。同社は『HILUCIS』をこれらの次世代光学デバイスに展開し、さらなる技術革新に貢献していくとしている。

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