東レが多機能塗剤を開発 即効性に優れた抗ウイルス粒子

2025年01月17日

ゴムタイムス社

 東レは1月16日、2022年に開発した従来比100倍以上の速度でウイルスを不活化する、即効性に優れる抗ウイルス粒子について、独自の処方で添加剤を配合することにより、抗菌性、防かび性、抗アレル物質性を兼ね備える多機能な塗剤(加工剤)を開発したことを発表した。
 2025年度中の量産および本格販売開始を目標に、2025年4月から抗ウイルス粒子を含む水分散液および塗剤を、繊維加工メーカーや日用品メーカーなどの幅広いユーザーに向けてサンプルを提供し、実用化に向けたマーケティングを推進する。

 抗ウイルス粒子は、酸化セリウム粒子の独自の合成方法と表面処理技術により、ウイルスに対する吸着性と酸化分解機能を付与することで、新型コロナウイルス(SARSーCoVー2デルタ株)を15秒で99・9%以上不活化する、従来の金属系抗ウイルス剤と比較して100倍以上即効性に優れる抗ウイルス粒子。また、インフルエンザウイルスと、ノロウイルスの試験代替ウイルスであるネコカリシウイルスに対しても、99・99%以上の不活化効果を確認している。
 また、独自の粒子製造技術により、平均粒径は約30ナノメートルと小さく、水溶液中での分散性も極めて高いことが特徴。粒子のサイズが小さいため散乱光が少なく、高い透明性を有しており、付与する製品の外観を損なわない。
 さらに、酸化セリウムの高い構造安定性により、銀系や銅系など、従来の金属系抗ウイルス剤において課題となっている黒ずみ等の変色などの経年変化を起こしにくいことも特徴。

 今回、抗ウイルス粒子の不活化メカニズム解析に基づき、最適な添加剤を処方することにより、分散性に優れ素材への固着性も高い、高機能な塗剤を開発した。本塗剤を含侵加工した不織布において、抗菌性(大腸菌、黄色ブドウ球菌)、防かび性(クロコウジカビ)、テキスタイルにおいて抗アレル物質性(スギ、ダニ)が、抗ウイルスの即効性を損なうことなく発現することを、外部機関での試験において確認した。この結果は、抗ウイルス粒子が添加剤成分と複合体を形成し、塗膜上で相互作用することで、各機能が相乗的に発現したもの。
 従来、これらの多機能が必要な場合は複数の薬剤を使用するが、この塗剤は1つの塗剤で複数の機能を発揮するため、製品の多機能化やコストの削減が期待できる。今後、さまざまな菌、カビ、アレル物質種への有効性の検証を行い、高まる衛生ニーズに応える塗剤開発を進めていく。

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