東レがナノアロイ技術で開発 超高制振ナイロン樹脂を

2025年01月23日

ゴムタイムス社

 東レは1月22日、ナイロン樹脂が有する高温剛性や成形加工性を維持しながら、汎用制振材(ブチルゴム)比4倍の制振性を有する超高制振ナイロン樹脂を開発したことを発表した。EVや自動運転での車内快適空間を生み出す新素材として、さまざまな部材へ適用を見据えた顧客へのサンプル提供を開始しており、2026年度の現有設備での本格生産化を目指す。

 EV化の進展に伴いエンジンノイズは減少する一方、路面から発生する低周波のロードノイズを抑制するニーズや、車外騒音規制の強化が予想されている。一般的な熱可塑性樹脂は制振性が低く、騒音を抑制するにはゴム系の制振材料(代表例:ブチルゴム)がこれまで用いられてきたが、熱可塑性を有さないため複雑形状部品や賦形などの二次加工には不向きという課題があった。また、自動車部品や電気電子部品などへの適用に必要な高温(~120℃)時の硬さ・剛性に課題があり、使用部位が限られていた。

 今回、高温剛性や成形加工性に優れるナイロン樹脂と制振性に優れる他樹脂とのポリマーアロイを検討した。通常のアロイ技術ではマイクロメートルオーダー程度の分散構造となり特性発現が困難だったが、同社独自のナノアロイ技術の適用により100~300ナノmのナノメートルオーダーでそれぞれの樹脂相が連続相となる共連続型構造を形成させることで、制振性と成形加工性、高温剛性全てに優れたナイロン樹脂を実現した。

 本技術では、制振性の指標となる損失正接が既存ナイロン樹脂の約28倍、ブチルゴムの約4倍向上することを確認した。さらに、熱可塑性を有するため、ガラス繊維などを添加した強化系製品への展開も可能であり、これまでにない、高温でも剛性が高く(高温剛性:ブチルゴムの約80倍)、制振性も有する材料が実現した。

 既存の柔軟なブチルゴム系制振材料が使用されてきたパッキンやシール材などでの置き換えのみならず、硬さも兼備可能で、各種騒音源のカバー・筐体ハウジングなど比較的大型の構造部材など新たな用途への展開も期待できる。

 今回開発した高制振性ナイロン樹脂は、モビリティ関連部品をはじめ、電気電子部品や産業用機器、建築部材などの幅広い分野への展開を目指し、量産技術の確立を進める。

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