東レは1月27日、バイオ医薬品の製造工程に用いるための高効率分離膜モジュールを開発したことを発表した。本モジュールは、バイオ医薬品の製造工程における目詰まりを低減することで、従来製品と比較してろ過性能が2倍以上に向上し、バイオ医薬品の収率90%以上ならびに精製度向上が期待できる。
まずは遺伝子治療薬製造の精製工程用途に向けて、幅広い顧客に試作品を提供して評価を進め、早期の上市を目指す。
今回、同社が開発した分離膜モジュールは、複数種類の不織布を用いた粗ろ過膜(デプスフィルター)と、中空糸を用いた限外ろ過膜の2段階から成る。
粗ろ過膜の開発においては、同社のエアフィルター製品の開発で培った技術を活用し、不純物を取り除くのに最適な繊維の太さや空隙構造の不織布にすることで、遺伝子治療薬の透過性能と、不純物の除去性能を高めた。
限外ろ過膜の開発においては、同社が人工腎臓の開発で培った、対象物質が膜に付着することを防ぐ低ファウリング(表面親水性化)技術を付与した中空糸膜を活用することで、タンパク質が吸着しにくく目詰まりしにくい膜を開発した。
これらの組み合わせにより、本モジュールを使用して得られた医薬品は、市販製品と同等以上の精製度と品質を維持すると同時に、遺伝子治療薬の精製工程でのロス率を半減し、約90%の高収率を得られることを確認した。
また、膜の目詰まり低減により、現在一般的に用いられている膜モジュールと比較して、連続ろ過可能時間を2倍以上延長することが可能となり、製品品質の安定化に加えて、製造コスト削減が期待できる。
さらに、同社が培ってきた中空糸膜モジュールの小型化技術を適用することにより、製造工程の省スペース化にも貢献する。
これらの特徴を活かすことで、本モジュールは遺伝子治療薬の製造におけるロス低減および高収率化によりコスト削減に貢献できると考えている。
また、本モジュールは遺伝子治療薬以外のバイオ医薬品製造工程にも適用可能であり、例えば、連続培養プロセスにおける長時間使用や目詰まりの抑制など、医薬品メーカーなどの顧客ニーズを解決するべく、幅広い用途への展開を目指す。
今後、2025年度中の販売開始を目標に、量産体制の構築を進めていく。
本モジュールは、2025年1月29~31日に開催されるnano tech 2025にて展示を行う。
同社は今後も、先端材料技術を活用した高付加価値製品の開発推進により、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を具現化し、社会貢献とともに持続的な成長拡大を目指していくとしている。