レゾナックは3月4日、表面分析手法の一つである走査型プローブ顕微鏡(Scanning probe microscopy)に関する特許技術について、2月14日に島津製作所と、非独占的実施権によるライセンス契約を締結したことを発表した。
本技術は、新しい計測指標を提供する技術で、今後、島津製作所が販売する走査型プローブ顕微鏡のオプションソフトウェアとして、同社技術の搭載が検討される予定。同社は、本技術の活用を通し、材料科学分野の解析に貢献していく。
ナノテクノロジーの進展は、半導体、高分子、バイオ、食品など、あらゆる分野において加速しており、いずれの分野においても、優れた材料を創出したり、材料が持つ機能の発現メカニズムを調べたりする上で、材料表面を分析することは非常に重要となる。
SPMは、ナノメートルオーダーで材料表面の微細な形状を調べることができる顕微鏡で、産業界にも広く普及している。このSPMは、カンチレバーと呼ばれる板バネの先端についた針を材料表面に近づけて、材料表面から受ける力を利用し、表面の形状を顕微鏡像として出力する。SPMの測定方法をフォースカーブモードにすると、形状に加え、凝着力や弾性率を顕微鏡像として出力できるが、従来技術では、鮮明な画像が得られなかったり、データの解釈に注意を要したりすることがあった。
同社は、SPMフォースカーブ測定時に、探針と材料表面との間に引力が働く距離に着目した。この距離を「破断長」と定義し、大量のデータを効率よく解析できる技術を見出して、容易に破断長像として出力できるようにした。破断長像では、凝着力像や弾性率像では得られない鮮明な像が得られるとともに、観測される力が「強いか・弱いか」だけでなく、「強く長いか・強く短いか」という解析ができるようになる。破断長は、凝着力や弾性率と同様に材料表面の特性を表す基本的な計測指標として活用できることから、同社は、2022年に関連技術の特許を取得した。本技術は、種々の材料表面に適用することができ、特に高分子や柔らかい材料表面の分析において有効。
島津製作所は、国内大手の分析・計測機器メーカーで、SPMをグローバルに提供している。このたび、本技術の像の鮮明さ、および汎用性が評価され、本契約締結に至った。本技術は、島津製作所が販売するSPMのオプションソフトウェアとして搭載が検討される予定。
今後も同社は、知的財産を足掛かりとした「共創」を進め、さまざまな社会課題の解決が行える「共創型化学会社」としての成長をめざすとしている。