住友ゴム工業は3月19日、ドレスデン工科大学のGert Heinrich教授との共同研究により、タイヤの耐久性能を決定する重要な要因であるゴムの破壊メカニズムを解明したと発表した。研究成果は、3月6~7日に米国フロリダ州オーランドで開催された米国化学会の招待講演で発表された。
ゴム材料に生じる割れ目や裂け目が進行する「き裂現象」は、タイヤの耐久性能を決定する重要な要因となっている。これまでは引き裂き試験などでゴムの耐久性を評価していたが、き裂先端のミクロスケールでの構造変化については不明点が多くあった。今回の研究ではシミュレーション技術を駆使してゴムのき裂先端にかかる力を解析し、き裂を決定する要因を明らかにした。
ゴムのき裂先端では膨張変形を受け、ボイド(物体に含まれる微小な空洞)が発生する。ボイドは成長して合一することで、き裂をさらに悪化させる。一方で、ボイドの発生により、き裂先端に集中する応力が低減することも明らかになった。
同社では引き続きボイドの分散状態を変えた際の力の分布と、き裂特性について研究を継続し、耐摩耗性能に優れた環境負荷の少ないタイヤの開発を進めていく。
Gert Heinrich教授はポリマー材料とエストラマー技術分野での世界的権威として知られている。
この度、米国科学会がゴム産業の重要な発明、革新、開発に対して大きな貢献をもたらした個人に授与するGoodyearメダルを受賞した。
同社は2023年3月に、タイヤ事業における独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表した。「TOWANOWA」はバリューチェーン上の5つのプロセスからなる「サステナブルリング」と各プロセスから収集したビッグデータを連携させる「データリング」で構成されており、二つのリング間でデータを共有・活用することで新たな価値提供を目指す。
「TOWANOWA」の「材料開発・調達」プロセスにおいて、今回の共同研究で得られたデータを活用することで、より高機能で高品質なタイヤの開発を推進する。「TOWANOWA」を通じ、同社はESG経営の推進を更に加速させ、2050年のカーボンニュートラルの実現と持続可能な社会の発展に貢献していく。
2025年03月21日