三洋化成、臨床試験結果が掲載 慢性創傷治癒の革新的材料

2025年04月10日

ゴムタイムス社

 三洋化成工業は4月8日、生体組織の修復・再生を促進する機能性タンパク質『シルクエラスチン』の慢性創傷治癒に関する臨床試験において、安全性と有効性に加え、治癒促進や感染リスクの低減といった優れた効果が確認され、その成果が権威ある科学誌「Scientific Reports」に掲載されたことを発表した。同社は、この革新的な技術を一日も早く市場に届けるため、米国において創傷治癒分野のマーケティングおよび販売を担うパートナー企業を募集している。

 糖尿病性潰瘍や褥瘡(床ずれ)などの慢性創傷は、多くの患者に長期的な苦痛や医療コストの増加をもたらす。慢性創傷は、創面を湿潤に保ちつつ細菌感染を防ぐことが重要だが、現行の治療法では完治が難しく、治癒が遅れることで感染のリスクが高まり、さらに治癒が遅れるという悪循環に陥りやすいのが課題。
 『シルクエラスチン』は、このような治りにくい慢性創傷の治療を目的とした新しい材料。組織修復を促進し、炎症や細菌の増殖を抑えることで、患者の治療効果を高め、生活の質の向上に貢献することが期待されている。

 シルクエラスチンは、シルクフィブロイン(シルク由来のタンパク質)とエラスチン(人の皮膚に含まれる弾性タンパク質)を融合した遺伝子組み換えタンパク質。液状で塗布すると患部に密着し、シルクフィブロインの強度とエラスチンの弾性・細胞親和性を兼ね備えたゲルへと変化する。炎症を抑えながら組織の再生を促進する特性を持ち、従来の治療では困難だった組織の再生や治癒促進への応用が期待される革新的な素材。

 京都大学との共同研究により、日本国内における医師主導試験および企業治験において、従来の治療で効果が得られにくいような慢性創傷でも『シルクエラスチン』が治癒を促進し、細菌感染を助長しないことが確認された。この結果を受け、2024年4月に日本で製造販売承認申請を行った。本製品は、日本初の遺伝子組換え技術を用いた医療機器となる予定。また、米国展開を見据え、FDA申請の準備も進めている。

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