UBEとUBEエラストマーは4月10日、船津公人教授(奈良先端科学技術大)、金尚弘准教授(東京農工大)、富士電機と連名で、「包括的な機能を有するソフトセンサ設計ツールの開発」により化学工学会の2024年度化学工学会賞『技術賞』を受賞したことを発表した。
受賞対象である本ソフトセンサ設計ツールは、日本学術振興会プロセスシステム工学第143委員会ワークショップNo.32において、同社を含めた各参加企業や大学とともに共同開発したツールで、実際に同社のプロセスに適用して有効性を確認している。
同社におけるプロセスの一例として、蒸発缶の液体中の成分濃度を一定時間間隔ごとにサンプリング分析して管理をしていたが、濃度が不安定になった際に析出により配管閉塞のリスクがあった。そこで、運転データから液体中の成分濃度をリアルタイムに予測するソフトセンサ適用を試みた。従来の方法では、100タグ以上の運転データの中から濃度に相関が高い運転データを抽出する際には各運転データの組合せごとに相関度合いを求める必要があり、データ解析時間がかかるが、本ソフトセンサ設計ツールを活用することで、極めて短期間で目的とする濃度と相関の強いタグを見出してソフトセンサを構築し、運用することが可能となった。今回、本ソフトセンサを適用したプロセスのオペレーターは、実装したソフトセンサにより、サンプリング分析の結果を待つことなく、缶液濃度の予測値をリアルタイムに把握し、この予測値を参照しながら運転条件を調整できるようになり、プロセスの正常性と工程品質の安定化、信頼性の向上を同時に実現した。
同社では、「Business Transformation with Digital」を目標に掲げ、10の領域(①Smart Factory、②Digital Marketing、③Velocity R&D、④Digital Management、⑤Digital SCM、⑥Digital ESG、⑦Digital Back office、⑧Digital HR、⑨Branding、⑩Data Analytics & AI)でDX推進に取り組んでおり、その1つが今回ソフトセンサ導入を実施したプラント領域(①Smart Factory)。多様なデータからの測定が困難なデータを予測可能とするソフトセンサは、プラント領域のみならず、他領域において幅広く展開できる可能性があるため、今後も活用を展開していく。