旭化成アドバンスと土木管理総合試験所、小岩金網は4月16日、工事現場で発生した土を有効活用する「ソイルセメントを利用した円形コンバック」の実用化に成功し、同月、事業化に至ったと発表した。
旭化成アドバンスと小岩金網は、落石・崩土対策や洗掘対策などの法面(のりめん)保護に用いる円形コンバック工法を2021年から手掛けており、従来はコンクリートを充填材として利用し、構造体としての強度特性を確保していた。しかし、山間部での施工では、セメント工場から現場までの運搬における制約が課題となっていた。
3社は、この社会的要請に応えるべく2023年よりコンクリートの代替材料として現場発生土を有効活用した同工法の開発に着手し、ラボ実験や実物大試験施工などを重ね、さまざまなデータを取得、検証を経て、同工法の実用化に至った。
なお現在、同工法に関する、「粘性土ソイルセメントの製造方法、粘性土ソイルセメント成形体の製造方法」の特許出願中となる。
ソイルセメントを利用した円形コンバックの特長は、現場発生土を有効活用したソイルセメントを円形コンバックの中詰材として使用することで、現場打設式の大型ブロック積擁壁とすることができる。円形コンバックの内袋はソイルセメントの余剰水をスムーズに排水させるため硬化速度を高める。また、円筒形の金網が型枠として機能するため、地形に応じた柔軟な配置が可能。
さらに、重量物の運搬が困難な山間部や狭あい地などにおいても、現場発生土を用いることで施工性が向上し、対応力の高い工法となる。
類似工法として、大型土のうに現場発生土を充填し積み上げる工法もあるが、袋の耐久性が低いため長期利用に適さず撤去と本設工事が必要となる。一方、円形コンバックは本設資材かつ現場発生土を流用できるため、大型土のう工法における「仮設」「撤去」「本設」の3工程を1工程に短縮でき、さらに、土砂崩落の修繕や豪雨災害の復旧工事では、土砂搬出の時間を軽減することができ、迅速な施工が可能となるため、復旧時間の短縮や二次災害のリスク低減に寄与する。
また、内部に充填するソイルセメントは現場の掘削土砂を有効活用するため、土砂の排出(残土処分)を抑制し、残土処分地確保における処分地不足、運搬コストの増加、法規制の強化等の課題解決にも寄与する。
さらに土砂排出の抑制による運搬車両や、工期短縮による重機の稼働時間低減が見込まれ、それらの排出するCO2の削減にも期待ができる。
今後も3社は連携し、ジオシンセティックス領域の新技術・新工法の開発を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していく。
2025年04月17日